銘柄レポート🔖 毎週土曜更新
上場19ヶ月で株価約77.5倍、そこから1ヶ月あまりで▼68%。いま日本でいちばん売買され、いちばん注目されている銘柄。
急落の原因は業績ではない——7/31の1Q決算で、3ヶ月だけで昨年1年分の約1.5倍(営業利益1兆2,700億円)を実際に稼いだことが確認された。壊れたのは期待の値段のほう。これだけの数字でも、市場の期待はさらに上にあった。決算への値付けは8/3から始まり、3日続伸したあと8/6は▼10.2%。値幅の大きさはまだ収まっていない。ここから何を見ればいいかを、この1ページで整理する。
会社が出した重要資料を、原文つきで記録していく節です。要約はアルミナが書いたもので、原文はリンク先の公式資料で確認できます。
発行元: キオクシアホールディングス(公式IR資料)/ アルミナ取得日: 2026-08-02
中身はこんな内容でした(全3ページ・機関投資家との質疑応答)
この時点でのアルミナの読み(執筆日: 2026-08-02)
この資料でいちばん大きいのは、長期契約の話です。NAND(メモリ)はこれまで、市況しだいで利益が大きく上下してきた産業でした。会社は「出荷の半分を長期契約にして、その振れ幅を小さくする」と言っています。ただし、これはまだ会社の主張であって、実績ではありません。本当に振れ幅が小さくなったかどうかは、これからの決算ごとに確かめられることなので、このページで追いかけていきます。
設備投資の増額(2,800億円→4,500億円)は、需要予測が当たれば利益の土台になり、外れれば重荷になる、両方の顔を持つ数字です。会社が言う「2027年後半までタイトな需給」と実際の市況がずれてこないか、が確認ポイントになります。
もうひとつ、株主還元の「50%」が確約ではないと明言された点は、配当や還元を期待して見ている人には大事な注記です。
出典: キオクシアホールディングス「Investor Day(2026年6月2日)質疑応答集」(画像は同資料1ページ目の引用・要約はアルミナ作成)
📌 今週の要点:決算への値付けが実際に始まった週。8/3は47,500円で寄り付いて終値49,160円、8/5には取引時間中56,800円まで3日続伸したあと、8/6は▼10.2%(米サンディスクの売上高見通しの報道と同じ日)。週間では46,500円→47,730円(+2.6%・TOPIXは+1.8%)。8/3には米国訴訟の判決(賠償約366億円)も開示された。
① 新しく分かったこと
⚖️ 訴訟の判決が金額つきで開示(8/3 15:30)
米テキサス州西部地区連邦地方裁判所が米国時間7/31に判決を言い渡し、子会社2社(キオクシア株式会社・Kioxia America, Inc.)に対し損害賠償約2億2,900万米ドル(約366億円・1米ドル=160円換算)の支払いを命じた。会社は「必要に応じて控訴を行うことを含め、取り得るあらゆる法的手段を講じてまいります」とし、「本判決がお客様への製品・サービスの提供に及ぼす影響はありません」と記載している。同額は1Q決算で訴訟損失引当金として計上済み。
→ 解釈:前回①で「営業利益が会社見通しに届かなかった一因」として挙げた引当366億円は、この判決の賠償額と同額だった。賠償額そのものは1Qに引当済みで、今回の開示に新しい金額は出ていない。控訴するかどうか、控訴した場合の費用は開示されていない。
📊 決算後の値付け=3日続伸のあと急反落(8/3〜8/7)
8/3は47,500円で寄り付き終値49,160円(+5.7%・出来高6,947万株・売買代金3兆4,230億円)。8/4 +6.0%(52,090円)、8/5 +4.2%(54,300円)と3日続伸し、取引時間中には56,800円(8/5)=週間高値。
→ 解釈:前週金曜のストップ高46,500円は比例配分(出来高118万株)でほとんど売買が成立していなかった。8/3〜8/5は1日2.6兆〜3.4兆円の商いを伴って売買が成立した(週を通しても1日1.7兆〜3.4兆円)——決算後の値段が実際の売買で決まり始めたのは今週から。
🔻 8/6(木)▼10.2%(48,740円)——同業の見通しが伝わった日
日本経済新聞は同日「キオクシア株価急反落 米サンディスク、売上高見通し市場予想下回る」と報じた(電子版・8/6付)。同日の東京エレクトロンは▼5.5%・レーザーテックは▼7.2%・アドバンテストは▼2.3%、TOPIXは+0.2%。翌8/7は取引時間中に44,170円まで下げ、終値47,730円(▼2.1%)。
→ 解釈:キオクシア自身の決算が終わったあとも、同じNANDを扱う会社の見通しが伝わった日にキオクシアの株価も大きく動いた——決算を通過しても、こうした材料が残っているという一例。市場全体(TOPIX)が+0.2%だった日に二桁下げた形は、7/29(TOPIXがプラスの中での続落)と同じ。
⚖️ 信用倍率は21.0倍→22.6倍(7/31時点)
買い残1,139万株→1,232万株(約94万株増)・売り残54.3万株→54.5万株。7/28〜7/30に2日で約3割下げた局面をはさんだ週の数字で、買い残は減らずに増えた。
🧩 新製品に関する報道(8/5)
GPUに直結する高速SSD「GP1」と、フラッシュメモリでDRAMを補う拡張モジュールが同日に報じられた(PC Watch・8/5)。いずれも適時開示ではなく、業績への寄与は数字として開示されていない。
② 見立ては変わったか → 🟢 変更なし。「業績は爆発・壊れたのは期待の値段」の軸のまま。今週動いたのは値段のほうで、会社からの新しい開示は訴訟判決(賠償額は1Qに引当済み)だけだった。
🚩 要検討(持ち越し2件+今週1件・いずれも本文の構造に関わるため自動では変えない):
・実績PERをどの利益で測るか——冒頭の「割安度」欄では実績PER(前期通期EPS基準)と直近12ヶ月PERの2本を併記している。本文側の物差しをどちらに揃えるか。
・10/1の株式分割で株価水準の連続性が切れる——「価格の地図」「売買集中帯」の価格をいつ・どう分割調整後に置き換えるか。
・冒頭と本文で計3か所ある「株価78倍」の丸め——上場時の公開価格1,455円から6/22高値112,700円までは77.5倍で、「78倍」は切り上げ側に寄っている。3か所を同時に直す必要があるため今週は据え置いた。
③ 🔒 前に見ていた材料、その後(7/31に書いたまま・書き換えていません)
(a) 8/3、比例配分のストップ高46,500円を上回って値が付き、終値でも46,500円を維持できるか → 8/3は47,500円で寄り付き、終値49,160円。取引時間中には44,370円まで下げる場面があった
(b) 8月第1週、7/30安値36,020円を終値で割らずに推移できるか → 週内でいちばん安い終値は8/7の47,730円、取引時間中の安値も8/7の44,170円。いずれも36,020円は下回っていない
(c) 次回公表の信用残で、信用倍率が21.0倍からさらに低下するか → 7/31時点は22.6倍。買い残は1,139万株→1,232万株
🔒 今週からの観察ポイント(あとから書き換えず、8/15に事実と突き合わせます)
(a) 8月第2週、8/5高値56,800円を終値で上回る日があるか
(b) 8月第2週に、終値が8/7の取引時間中安値44,170円を下回る日があるか
(c) 次回公表の信用残(8/7時点)で、買い残1,232万株が増えるか減るか
④ 📅 次に見るもの——次回の信用残公表(8/7時点分・8/12ごろ)・自己株式の取得状況に関する開示(8/3開始・通常は翌月初の月次開示=8月分は9月上旬ごろ)・訴訟の控訴に関する続報・9/30 分割基準日→10/1 効力発生・10/30 自己株買い期間末・次回(2Q)決算は10月末〜11月ごろ・為替。
確認済み(機械監視): 業績開示=8/3に訴訟判決(賠償額は1Qに引当計上済み) / 需給=信用倍率22.6倍(7/31時点) / 株価=週間+2.6% / 実績PER=46.6倍(8/7終値・前期通期EPSベース)
📌 今週の要点:週半ばの急落で36,020円(7/30)まで下げたあと、金曜は市場全体の急騰の中でストップ高46,500円(比例配分)。週間では56,010円→46,500円(▼17.0%・TOPIXは▼0.2%)。そして引け後に1Q決算=「営業1.3兆円計画」にほぼ計画どおりの着地と、7-9月はさらに増収増益の会社見通し・株式分割1:3・8,000億円の自己株式取得枠が同時に出た。値付けの本番は週明け8/3。
① 新しく分かったこと
🧾 1Q実績(7/31 15:30開示):売上1兆7,671億円・営業1兆2,700億円・純利益8,422億円・EPS 1,539.91円
売上は前四半期(1兆29億円)の約1.8倍。増収の主因は「生成AI用途を中心としたデータセンター向け顧客の需要が旺盛に推移したことによる平均販売単価の大幅な上昇」(短信の記述)。5/15に会社が示した1Q見通し(売上1兆7,500億・営業1兆2,980億)に対して、売上は上回り、営業利益は280億円(▲2.2%)届かなかった。ただしこの期には訴訟の損失引当366億円と株式報酬費用194億円が計上されており、これらを除いて会社が開示するNon-GAAP営業利益(1兆3,262億円)は、同じ5/15短信のNon-GAAP見通し(1兆3,000億円)を上回った。
→ 解釈:前回から見てきた「1.3兆円計画」への答えは、「売上は計画超え・営業利益のズレは訴訟引当と株式報酬を除けば計画超え」。
📈 7-9月の会社見通し=さらに加速(売上2兆3,900億円・前四半期比+35.2%、営業1兆8,900億円・同+48.8%)
データセンター向け需要が引き続き旺盛に推移する見込み、という説明。一方で日本経済新聞は「市場予想下回る」と報じた(電子版・8/1付)——市場の期待は会社見通しのさらに上にあった。
→ 解釈:数字は加速していても、「期待の値段」との勝負は終わっていない。8/3の値付けが市場の答えになる。
✂️ 株式分割1:3(9/30基準日・10/1効力)+💰 自己株式取得枠8,000億円
分割は投資単位の引き下げが目的(現値46,500円なら分割後は1.55万円/株・100株単位の最低投資額は約155万円)。自己株買いは上限3,000万株(発行済の5.5%)・8,000億円、期間は8/3〜10/30の市場買付(目的は「資本効率の向上と株主還元の充実」=開示の記述)。ただし現値46,500円では金額上限8,000億円が先に効き、買えるのは約1,720万株=発行済の約3.1%——「5.5%」は株価が26,000円台まで下がった場合に届く株数上限。配当予想は引き続き「未定」のまま。
⚖️ 信用倍率は36.8倍→21.0倍へ低下(7/24公表)
買い残1,389万株→1,139万株・売り残37.8万株→54.3万株。ただしこれは7/24申込時点の数字で、今週の急落(7/28以降)はまだ反映されていない。買い残の整理が進んだかは次回公表(下の観察ポイント(c))で確認する。
🎢 週中の値動き:2日で約3割安→金曜はストップ高のまま決算へ
7/28(火)▼18.3%・7/29(水)▼13.9%と2日で約3割下げ、7/30には36,020円(6/22高値112,700円から▼68%)まで。7/28はTOPIX▼2.5%・アドバンテスト▼10.1%・ソフトバンクG▼4.4%と、市場全体とAI・半導体関連がそろって下げた日。7/29はTOPIXがプラスの中での続落=キオクシア固有色が強い日だった。金曜7/31は、米ハイテク企業の好決算を受けた「AI・半導体株の見直し買い」(日経報道)で日経平均が一時3,000円超高となる中、ストップ高46,500円に張り付いたまま比例配分(出来高118万株・前日は9,154万株)。ほとんど売買が成立しないまま決算を迎えた、というのが金曜の実像。
② 見立ては変わったか → 🟢 変更なし。「業績は爆発・壊れたのは期待の値段」の軸は、今回の決算でむしろ実測で裏付けられた(業績は会社計画どおりの高水準。それでも市場予想には届かなかった)。
🚩 要検討(2件・本文の構造に関わるため自動では変えない):
・実績PERの分母のずれ——現在は前期通期EPS(1,024円)ベースだが、直近12ヶ月分(前期通期1,024.07円−前年同期1Q 33.90円+今回1Q 1,539.91円≒2,530円)に置き換えると、同じ株価でもPERは45倍→18倍前後まで変わる。どちらの物差しを見せるか。
・10/1の株式分割で株価水準の連続性が切れる——値段の地図・売買集中帯の価格水準を分割調整後でどう扱うか。
③ 🔒 前に見ていた材料、その後(7/25に書いたまま・書き換えていません)
(a) 1Q決算で2Q以降の見通し・長期契約への言及をどう置くか → 2Q見通しは売上+35.2%・営業+48.8%の加速と確認(大口顧客・長期契約の個別言及は短信にはなく、説明会資料は次回確認)
(b) 売買集中帯7万〜7.5万円を出来高を伴って上抜けられるか → 週間高値は57,410円(7/27)。7万円台には届いていない
(c) 7/17安値52,110円を終値で維持できるか → 7/28終値44,550円でこの水準を下回った(週間安値36,020円)。下値の目安は36,020円へ引き直し
🔒 今週からの観察ポイント(あとから書き換えず、8/8に事実と突き合わせます)
(a) 8/3(月)、比例配分のストップ高46,500円を上回って値が付き、終値でも46,500円を維持できるか(「市場予想下回る」報道の消化と決算評価が同時に出る日)
(b) 8月第1週、7/30安値36,020円を終値で割らずに推移できるか(8/3から自己株式の取得期間が始まる)
(c) 次回公表の信用残で、信用倍率が21.0倍からさらに低下するか(買い残の整理が続いているかの確認)
④ 📅 次に見るもの——8/3(月)決算への値付け本番+為替(円買い介入観測の続報・下の⚠️欄参照)・自己株式取得の開始・毎週の信用残の公表・9/30 分割基準日→10/1 効力発生・10/30 自己株買い期間末・次回(2Q)決算は10月末〜11月ごろ。
確認済み(機械監視): 業績開示=1Q決算着地 / 需給=信用倍率21.0倍に低下 / 株価=週間▼17.0% / 実績PER=45.4倍(7/31終値・前期通期EPSベース)
未来のことで確定している数少ない事実=「いつ・何が出るか」。自社の予定だけでなく、同業の決算や市場全体の経済イベントもここに出ます。日付はすべて日本時間・日をタップすると詳細が表示されます。
💱 為替が大きく動いています。7/31、政府・日銀の介入とみられる円買いの動きが報じられました(片山財務相はコメントせず・三村財務官は「米から支援」と発言=報道)。米財務省も複数の銀行に円相場へ介入する可能性を通知したとロイターが報じています——日米による実際の共同介入までは確認されていませんが、日米連携の可能性が意識される展開です。ドル円は159円台から一時157円台へ円高が進み、日経平均先物も同時に軟調となりました。
キオクシアの1Qの増収には為替(平均160円・前年同期145円)も寄与しており、円高が定着すれば同じ押し上げ効果は期待しにくくなります(影響の大きさは為替感応度・ヘッジの確認が必要)。介入観測が続いて円高がさらに進む場合、8/3の値付けには「決算の強さ」と「為替の重し」が同時に乗ることになります。
丸い番号をタップすると、その出来事の「なぜ」に飛びます。
出典:株価・信用データはマーケットデータ、市場のできごとは適時開示ほか公開情報。金額は調整後終値。チャート:TradingView Lightweight Charts™
「1.3兆円計画」への答えが出た。売上1兆7,671億円は見通し超過、IFRS営業1兆2,700億円は見通し比▲2.2%(主因は訴訟引当366億+株式報酬194億の一過性費用で、除いたNon-GAAP営業1兆3,262億円は超過)。7-9月はさらに増収増益の会社見通し。ただし増収には為替の追い風(平均160円・前年同期145円)も乗っており、営業利益率71.9%は供給制約と価格急騰が生んだ極端な水準。争点は「この利益率が何四半期続くか」——価格・供給規律・顧客の在庫・増産投資の4点で確かめていく。
信用倍率は36.8倍→21.0倍へ低下(7/24公表・今週の急落は未反映)。8/3から自社株買いの取得期間が始まる——枠は上限3,000万株(5.5%)・8,000億円だが、現値46,500円では金額上限が先に効き、買えるのは約1,720万株=発行済の約3.1%。「5.5%」は株価が大きく下がった場合に届く株数上限で、現値での買い支え規模ではない。
金曜はストップ高46,500円に張り付いたまま比例配分——決算への値付けは8/3から。当面の物差しは上が46,500円(比例配分値)、下が7/30安値36,020円。25日線(67,558円)は▼31%上にあり、1日の平均値幅(ATR)は18.7%まで拡大——普通の大型株の5倍超動く状態が続く。
※「上がる/下がる」の断定はしません。いまの状態の要約と、確認すべき条件です。詳しくは以下の各章で。
悪い決算もIRも一つも出ていません。世界のAI・半導体株への資金集中という土台の上で、韓国市場の需給崩壊が引き金になり、機械的な売りが連鎖しました。表はいちばん上が根っこ(土台)で、下へ行くほど新しい話になります。
① 起点は韓国市場だった
急落の始まり(6/23)は韓国市場の崩れで、日本の悪材料ではありません。「なぜ下がったのか」を日本のニュースの中だけで探すと、存在しない理由を見つけてしまいます。
② 後から出たニュースを「原因」と勘違いしない
話題の中国製AI「Kimi K3」の発表は7/17——急落開始(6/23)の3週間以上あとです。下げの理由として語られる物語の多くは、下げの後から来ました。同じ日の特許訴訟の評決(賠償暫定371億円)も、米国時間7/16の評決を東京が知ったのは7/17の朝。「決定が出た日」「報じられた日」「市場が動いた日」は全部別です。
③ 決算は15:30開示→反応は翌営業日
キオクシアの決算は15:30(取引終了後)開示が基本。7/31(金)の1Q決算も、株価の答えが出るのは週明け8/3(月)です。当日の値動きだけを見ると読み違えます。
短期の値動きから離れて、会社そのものを見ます。キオクシアはNAND型フラッシュメモリ(データ保存用の半導体)の世界大手——スマホやPCの中の記憶装置、そしていま急拡大しているAIデータセンター向けの大容量SSDを作る会社です。前身は東芝のメモリ事業(2017年に分社)。四日市・北上の巨大工場を持ち、米SanDiskと生産を共同運営しています。数字の出どころは決算発表(適時開示)の実数です。
この利益の伸び方は「事業が29倍になった」のではなく、メモリの値段が上がると利益が何倍にもなる構造(固定費の大きい装置産業のテコ)によるものです。テコは逆にも働く——価格が下がる局面では利益は同じ勢いで縮みます。「メモリは景気循環株」という10年来の常識と、「AIで構造が変わった」という新しい説の衝突が、この株の毎日の値動きの正体です。
旧親会社側ファンドは「完全撤退」を終えていた ── 上場時に過半を握っていたベインキャピタル系ファンドは1年半かけて段階的に売却し、6/11の大口売却(1,852万株・市場外・当日の終値より約12%安い価格)を最後に保有ゼロになった(6/16提出の変更報告書。7月上旬には幹部が全株売却を表明したと報道)。注目すべきは順番で、売り切ったあとも株価は上がり続け、6/22に上場来高値をつけた——巨大な売り物を吸収してなお買われるほど需要が強かったということ。同時にこの時系列は「7月の急落はベインの売りが原因」という観測を打ち消す(急落が始まった時点で、もう売る株がない)。売り圧の源泉が消えたという意味では、需給の重しが一つ外れた状態でもある(各数値は開示書類より。下の出典参照)。
この鎖のどこかが切れると、下の「前提」が崩れます。確認の場は3ヶ月ごとの決算(実績と次四半期計画)、同業の決算(自社より先に出ることが多い)、そして米大手のAI投資計画(7/30のマイクロソフト・メタ決算など)。
その数字の土台にある「前提」──これが生きている限り強さは続く
短期の上げ下げの土台にある「前提」です。この前提が生きている限り会社の強さは続き、崩れたら話が変わります。
PER=株価が「1年分の利益」の何倍まで買われているか。数字が大きいほど、期待が多く乗っている状態です。キオクシアは会社が通期予想を出さないため、直近の本決算の実績1株利益で計算しています。
計算:その日の終値 ÷ 直近の本決算で公表済みの実績1株利益(2025年5月の本決算以降)。引け後の開示は翌営業日から反映——2026/5/15の本決算(実績EPS 1,024.07円)は5/18から分母に適用。会社予想は非開示のため使っていません。
※このページのPERの正本は「直近の本決算で公表済みの実績1株利益」ベースです。会社は通期予想を開示していないため(1Q短信の予想は中間期まで)、四半期ごとに分母が飛ぶ直近12ヶ月ベースを時系列チャートの主軸にはしません。ただし正本を出す場所では直近12ヶ月ベースを併記します。
※2026年10月1日に1株→3株の株式分割が予定されています(基準日9/30)。分割後は株価もEPSも3分の1になるためPERの水準は変わりませんが、価格の地図・売買集中帯の価格は分割調整後に置き換えます。
読み方 ── メモリ株のPERは市況の鏡です。1年前、株価2,000円前後でPERが4倍だった頃、市場は「利益はもうピーク」と見ていました。実際は逆で、利益はそこから桁違いに伸びた——メモリ株は「PERが低いから割安」が通用しにくい典型例です。決算後のいまは、前期実績EPS(1,024.07円)で測ると46.6倍、確定した直近12ヶ月のEPS(2,530円)で測ると18.9倍(いずれも8/7終値47,730円)——だがサイクル株は利益がピークに近いほどPERが小さく見える。18.9倍は割安の証拠ではなく「1Q並みの利益が続く」と仮定した場合の数字です。1Qの営業利益率71.9%は供給制約と価格急騰の産物で、本当の争点は「サイクルが落ち着いた後の平均的な利益はいくらか」。どの利益で測るかの選択が、そのまま強気と弱気の分岐になっています。
証券アプリの「PER」と数字が違うのはなぜ?(算出基準の違い)
証券会社のアプリなどに表示されるPERは、多くの場合「今期の予想利益」が分母です(会社予想を出さないキオクシアでは、四季報やアナリストの予想値が使われます)。このページのPER(実績PER・上の「いま」の数値)は「直近本決算の実績利益」が分母——株価が同じでも、分母の利益が違えばPERは大きく変わります。
キオクシアは4〜6月の3ヶ月だけで昨年1年分の利益を超えたため、「この爆益が続く」という仮定を分母に入れるほど、PERはいくらでも低く見えます。アプリの予想PERが低く出るのはその仮定の強気さと表裏一体——このページでは仮定入りの数字は使わず、実績PER(46.6倍)と直近12ヶ月PER(18.9倍)の2本だけを物差しにします。
いまの株価に織り込まれている前提
いまの46,500円(実績PER 45.4倍・直近12ヶ月EPSなら約18倍)が成立するために必要な前提は、「1Q並みの利益水準がしばらく続き、7-9月の加速見通しも達成される」こと。ただし金曜は比例配分でほとんど売買が成立しておらず、この前提を市場がどう値付けするかの答えは8/3から出ます。
崩れる合図──7/31の1Q決算で実績が計画を明確に下回る/同時に出る7-9月計画が減速を示す/メモリ価格の下落報道が続く/米大手のAI投資計画が削減される。どれかが出たら、このページの見立ては見直しです。
売買の指示はしません。過去1年の値動きが「どの価格帯で折り返してきたか」を、機械的なルールで塗った地図です。決めるのは、この地図を見たあなたです。
この地図には2種類の帯があります。面の帯(塗り)=10日以上離れて3回以上、値動きが折り返した価格帯。青の斜線=下げ止まりの記録がある支持帯、橙の点=上値を抑えられた記録がある抵抗帯。枠の帯(囲み)=大きな値動きが始まった起点の値幅(青枠=上向き、橙枠=下向きの起点)。帯の位置は機械的なルールで引き、名前(支持帯・抵抗帯・上場来高値の帯など)は分かりやすさのための呼び名です——手で選んでいません。チャート上の①〜③は、下の説明と対応しています。この銘柄は会社予想の1株利益がない(または赤字)ため、PERなどの換算は載せず、価格と観測事実だけで示します。
接触3回:下げ止まり3・割れ0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=02/06、03/09、03/31
この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い
2025-11-10から5営業日で-24.7%の下げが始まった日の値幅(3.4ATR)|その後の再訪1回:反落0・上抜け1・未決着0
2025-09-26から5営業日で+40.6%の上げが始まった日の値幅(4.6ATR)|形成後、価格はまだ一度もこの帯に戻っていません(再訪なし)
5営業日で+21.0%の上げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。
5営業日で+27.1%の上げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。
⚠ 過去に折り返した帯・値動きの起点の帯は約束ではありません。支持帯を終値で2日連続下回った場合は、その帯の下げ止まり記録が崩れたものとして、次の開示と市場全体の地合いを確認します。帯のルール=面の帯:10日以上離れた接触3回以上・幅は接触価格±0.25ATR/枠の帯:直前5日の終値最安(最高)の日から5営業日以内に3.0ATR以上動いた日の値幅(値動きの大きい順に各方向3本まで・今回ほかに3本の起点を省略)。この帯は毎週、同じルールで機械的に引き直します。
下値の目安・窓・移動平均線をチャートに示しました。
↓印=窓開け(前日から飛んで下げた日)。縦軸=株価(円)・横軸=日付。線の意味は下の説明と色で対応。
売買集中帯(この3ヶ月、どの値段で商いが多かったか)
直近60営業日(4/27〜7/24)の売買を価格帯ごとに集計したもの(日々の平均約定単価ベースの推計)
信用残の1年
信用買い残(あとで売る予約)/信用売り残(あとで買い戻す予約)の推移
左目盛:万株(線)。下の棒:1日の売買代金(億円)。信用残は週1回の公表。
まとめ ── 需給は「重いが流動性で捌ける」という特殊な状態。値幅15%の乱高下は、信用の投げと買い直しが日本一の商いの中でぶつかり合っている姿。全体の結論は最終章「総合判断」へ。
ここまでの整理 ── ファンダメンタルズ:1Qは会社計画にほぼ沿う着地で、7-9月はさらに増収増益の会社見通し。争点は営業利益率71.9%の持続期間へ移った/需給:信用倍率は21.0倍へ低下(今週の急落は未反映)。8/3から自社株買い開始(現値では約1,720万株=発行済の約3.1%相当)/テクニカル:ストップ高比例配分のまま決算を迎え、値付けは8/3から。1日の平均値幅は18.7%まで拡大。そのうえで、上と下、両方の「確認のサイン」を置いておきます。
このページの「なぜ」は、以下の適時開示と市場データをもとに、アルミナが整理・解釈したものです。
決算数値は適時開示の実数(IFRS)。会社見通しは2026/5/15公表の1Q見通しで、実績は8月の決算で確定します。