銘柄レポート🔖 毎週土曜更新

IHI(7013)株価分析 機械

コロナ期の安値150円(調整後)から、2026年2月の高値4,698円まで約31倍。防衛・航空エンジンを柱に売上も利益も過去最高を更新し、今期は「営業利益+45%」を会社が予想する。
それでも株価は高値から▼39%の2,878円——「利益は最高なのに、株価は戻らない」のはなぜか。数字の中身を、この1ページで整理する。

IHIの今と見どころ📊 株価データ:2026-08-14終値(毎日夜更新)
✍ 見立て・本文:2026-08-08執筆(週1+イベント時更新)
次回の本文更新:8/15(土)ごろ
30秒だけの人へ
  • 本業は航空エンジン・防衛・原子力・プラントの重工大手。防衛予算の拡大(GDP比1%→2%)とミサイル増産・次期戦闘機GCAPを追い風に、売上・営業利益・純利益とも過去最高で着地し、今期も3期連続の最高益を会社が予想。株価はコロナ安値150円(調整後)から2月高値4,698円まで約31倍になった。
  • 今期予想は営業+51%(2,500億円・8/5に上方修正)と派手だが、純利益は+7%(1,720億円)にとどまる——前期の純利益に税効果という一回きりの押し上げ(+482億円)が入っていた反動。さらに営業利益2,500億円のうち930億円は計画的な不動産売却益(会社が内訳を開示)。「営業+51%」と「EPS+6%」のどちらを物差しにするかで、割高感が全く変わる銘柄。
  • 1Q決算は8/5(水)13:00に開示——営業利益732億円のうち400億円は不動産譲渡益で、会社が併記した「不動産売却除く営業利益」は331億円(前年同期比+123億円)。通期計画も営業2,500億円へ上方修正されたが、株価は開示日の8/5が前日終値比▼6.5%。株価の物差しは25日線(2,815円)と戻り高値3,071円(7/6)、下は年初来安値2,245円(6/11)。
いまの状態
業績受注1兆9,547億円・売上1兆6,434億円・営業1,655億円(率10.1%)・純利1,609億円——すべて過去最高。今期は8/5の1Q決算で上方修正され、売上1兆8,400億円・営業2,500億円(率13.6%)・純利1,720億円と3期連続最高を予想。1Qは売上3,745億円(+10.9%)・営業732億円(うち不動産譲渡益400億円) 株価の流れ2/10の高値4,698円(3Q決算の日・取引時間中)から6/11の2,245円まで▼52%調整→7月は7/6の3,071円まで戻したあと押し戻され、8/5の1Q決算(13:00開示)当日は前日終値比▼6.5%。8/7終値2,744.5円は25日線2,815円・75日線2,777円の下 需給信用買い残1,694万株(7/31付)はピーク(2,671万株・5/15)から▼37%。ピークは高値の2月ではなく下落中の5月=下げを買い向かった分の整理が進行中。直近25日の平均出来高に対しては1.17日分(決算週ぶんは8/12ごろ公表) 割安度予想PER 17.0倍(会社が8/5に修正したEPS 161.67円)。2024年5月は10倍前後・2月の高値では38倍(終値ベース)——この2年でPERの水準そのものが切り上がった(リレーティング)銘柄
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📝 今週なにが変わったか 8/8更新

📌 今週の要点:8/5(水)13:00に1Q決算が開示された。営業利益は732億円(前年同期比+250.5%)、通期計画も営業2,400億→2,500億円へ上方修正。ただし1Qの営業利益732億円のうち400億円は不動産の譲渡益で、会社が併記した「不動産売却除く営業利益」は331億円(前年同期比+123億円)。株価は開示日の8/5が前日終値比▼6.5%、週間は▼2.9%(2,744.5円)。同じ週にTOPIXは+1.8%だった。

① 新しく分かったこと

➡️ 1Q決算(8/5・13:00開示)——増収増益。ただし営業利益732億円のうち400億円は不動産譲渡益
売上収益3,745億円(+10.9%)、営業利益732億円(+250.5%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益535億円(+361.3%)。短信本文には「不動産譲渡に伴う400億円の利益計上」と明記され、会社は説明資料で「不動産売却除く営業利益」を331億円(売上収益比8.8%・前年同期比+123億円)と併記している(会社資料は億円未満を切り捨て表示のため、732−400と331には1億円の差が出ます)。営業キャッシュ・フローは432億円の支出超過で、会社は「主に棚卸資産の増加や法人所得税の支払によるもの」と説明している。
→ 解釈:本文が書いた「見出しの数字と、事業の増益の距離」と同じ構図が、1Qでも「+250.5%」と「不動産売却除きで+123億円」という形で出た。会社自身が不動産を除いた数字を並べたことで、この銘柄を追う物差しが1本はっきりした。なお「不動産売却除く」は不動産を外しただけで、為替の影響はこの中に残っている。

➡️ 通期計画を上方修正。増額100億円の内訳は「不動産売却を除く側+70億円」「不動産売却益+30億円」
受注高1兆7,600→1兆7,700億円、売上収益1兆8,300→1兆8,400億円、営業利益2,400→2,500億円、親会社所有者帰属当期利益1,650→1,720億円(EPS 155.09円→161.67円)。営業利益の内訳は、不動産売却除く営業利益が1,500→1,570億円(+70億円)、不動産売却益が900→930億円(+30億円)。会社は修正理由を「第1四半期の航空・宇宙・防衛セグメントの実績、および、不動産売却の進捗を踏まえ」と説明している。配当予想(年23.00円)は据え置き、為替前提は2Q以降1ドル145円。
→ 注記:本文が「営業+45%」と書いているのは、この修正前(計画2,400億円)の数字です。修正後は前期実績1,655億円に対して+51%になります。

➡️ 焦点だった航空・宇宙・防衛は、増収+21.0%に対しセグメント営業利益は+4.4%
売上収益は1,279→1,547億円(+21.0%)、セグメント営業利益は279→291億円(+12億円・+4.4%)。会社の増減要因の説明では為替影響+29億円・事業環境の変化+13億円が挙がり、これに研究費・人件費等の先行投資増がマイナス方向で乗る形。民間エンジン事業の売上収益は858→1,094億円(+27%)。受注高は1,370→1,380億円(+0.8%)で、会社は「防衛は下期において航空エンジン、ロケットモーターの受注・売上が拡大する見通し」と説明している。
→ 解釈:1Qの増益(不動産売却除きで+123億円)の出どころを並べると、資源・エネルギー・環境が営業損益△33→28億円、産業システム・汎用機械が3→55億円と、安定収益事業側の改善が大きい。成長事業として見ていた航空・宇宙・防衛の利益寄与は+12億円で、その増減要因には為替+29億円が入っている。「事業の増益は出た。ただし出どころは、本文が想定していた場所とは違った」というのが1Qの姿。

➡️ 受注高は全体で▼15.0%の3,607億円(前年同期4,243億円)
会社は「エネルギー事業前期大型案件の反動」と説明。セグメント別では資源・エネルギー・環境が1,431→799億円(▼44.2%)、社会基盤が224→161億円(▼28.1%)、産業システム・汎用機械が1,127→1,181億円(+4.8%)。

➡️ 子会社IHIエアロスペースの資格停止処分が、今回の短信に明記された
6/2にJAXAから5か月間の競争参加資格停止処分(機材装置の保全業務で、事実と異なる報告に基づく費用請求が確認されたことが理由)を受けた件について、会社は今回の短信本文に記載し「本件により当社グループ業績への影響がある場合には、速やかに業績見通しへ反映していきます」としている。
→ 解釈:会社は「影響がある場合は反映する」と書いており、今回の見通しにいくら織り込んだ(あるいは織り込んでいない)のかは示していない。宇宙は会社が「育成事業」に置く分野で、業績に数字として出るかどうかは現時点では分かりません。

➡️ 決算前後の値動きと、同じ週に決算を出した同業
8/4終値2,879.5円(+3.9%)→ 8/5は始値2,949円・高値2,965円をつけたあと13:00の開示後に売られ終値2,691.5円(前日終値比▼6.5%)、出来高4,902万株は直近25日平均(1,448万株)の3.4倍 → 8/6終値2,638.5円(▼2.0%)→ 8/7終値2,744.5円(+4.0%)。週間の高値は2,965円(8/5)、安値は2,608円(8/7)。8/7終値は25日線2,814.7円・75日線2,777.3円をいずれも下回っている。
→ 参考:同じ週に三菱重工(8/4・13:30開示)は週間+7.4%、川崎重工(8/7・11:30開示)は+0.6%。ただし開示日が火・水・金とばらけており、週間騰落率に含まれる「決算後の時間」の長さが3社で違います(川崎重工は金曜の半日ぶんだけ)。同じ条件での決算反応の比較にはならない点に注意。

➡️ 信用買い残の整理は7/31時点でも続いている
7/31付の信用買い残は1,694.5万株。前週(7/24付)の1,800.9万株から106.4万株(▼5.9%)減り、5/15のピーク2,670.5万株からは▼36.6%。売り残は42.7万株で信用倍率39.7倍、直近25日の平均出来高(1,448万株)に対しては1.17日分。なお決算をはさんだ8/3〜8/7週ぶんの残高は、まだ分からない。

② 見立ては変わったか → 🚩 要検討
見立ての骨格——「見出しの営業増益率ではなく、不動産売却を除いた事業側の増益で追う」——は変わらない。むしろ会社自身が「不動産売却除く営業利益」を通期・四半期の両方で並べたことで、物差しとしては使いやすくなった。
検討が要るのは因果の順路のほう。本文は「防衛予算GDP2%と航空需要の拡大 → 受注高・受注残の積み上がり → 四半期の『事業の増益』」という順で書いているが、1Qで実際に利益を押し上げたのは安定収益事業(資源・エネルギー・環境、産業システム・汎用機械)と不動産で、航空・宇宙・防衛の営業増益は+12億円(増減要因のうち為替影響+29億円)だった。会社は「防衛は下期に拡大」と説明しており、1四半期だけで順路が崩れたとは言えない。ただし「成長事業が四半期の利益を牽引しているか」は、四半期をまたいで確かめる論点になった。本文の書き換えは今週は行わず、この🚩を置いておく。

③ 🔒 前に見ていた材料、その後(下の(d)〜(f)の条件文は8/1に書いたまま・書き換えていません。→以下が今回追記した事実です)

(d) 1Q決算で、通期計画の「事業の増益+293億円」に対し、1Qのセグメント利益(防衛/民間航空エンジン)が前年同期からいくら増えたか
→ 会社が開示している単位は「航空・宇宙・防衛」セグメントで、防衛と民間航空エンジンを分けた利益は開示されていません。そのセグメントの営業利益は279億円→291億円で+12億円(+4.4%)。民間エンジン事業について会社が単独で開示したのは売上収益(858→1,094億円・+27%)までで、利益は分かりません。
なお条件が問うた「+293億円」は通期・全社の増減要因ベースの数字で、今回の1Q開示に直接対応する行はありません。近い切り口として会社が示したのは、全社の「不動産売却除く営業利益」が1Qで331億円(前年同期比+123億円)、通期見通しで1,500億円→1,570億円(+70億円)への上方修正——という2つです(対象範囲も期間も違うため、+293億円と直接は引き算できません)。
(e) 決算の開示日から5営業日のあいだ、終値が25日線(7/31時点2,807円)の上に留まるか、下に離れるか
→ 開示(8/5)から3営業日が経過。終値は8/5が2,691.5円、8/6が2,638.5円、8/7が2,744.5円で、いずれも2,807円を下回っている。8/7時点の25日線は2,814.7円。残る2営業日は8/10(月)と8/12(水)(8/11は山の日で休場)。
(f) 8/4(火)公表の7/31付信用買い残が1,800万株を下回るか
1,694.5万株。前週の1,800.9万株から106.4万株(▼5.9%)減っている。

🔒 今週からの観察ポイント(あとから書き換えず、翌週に事実と突き合わせます)

(g) 8/12(水)ごろ公表の8/7付信用買い残が、7/31付の1,694.5万株からどちらへ動くか(決算をはさんで整理が続いたのか、買いが入ったのか)
(h) 8/12(水)=決算開示から5営業日目の終値が、25日線(8/7時点2,814.7円)に対してどこにあるか
(i) 会社が言う「防衛は下期に航空エンジン・ロケットモーターの受注・売上が拡大」について、2Q決算(過去3年は11/6〜11/7に開示)では航空・宇宙・防衛の受注高(1Q 1,380億円)の積み上がりと会社説明の更新を見る。下期の売上・利益として実際に出たかどうかは3Q(2月ごろ)以降に確かめる。

④ 📅 次に見るもの——8/10(月)・8/12(水)の終値(決算後5営業日の区切り)・8/12(水)ごろ 8/7付の信用残・9月末の中間期末に向けた為替(会社前提145円/ドル、感応度は1円あたり2〜4Qの営業利益で15億円と会社が開示)・11月上旬の2Q決算(過去3年は11/6〜11/7・13:00〜15:00開示)・IHIエアロスペースの資格停止(6/2から5か月)が業績見通しに反映されるかどうか。

前回(8/1)の記録

📌 今週の要点:会社からの新しい開示は今週ゼロ。株価は週間▼1.8%(2,827.5円)で、TOPIX(▼0.2%)より弱い1週間だった。7/30に週安値2,701円まで押されたあと、7/31は今週いちばん多い出来高を伴って+2.0%と戻し、25日線の上に乗せて週を終えている。

① 新しく分かったこと

➡️ 信用買い残の整理は、7/24時点でも続いている
7/24付の信用買い残は1,800.9万株。前週(7/17付)の1,936.8万株から1週間で135.9万株(▼7.0%)減り、5/15のピーク2,670.5万株からは▼32.6%。売り残は49.6万株で信用倍率36.3倍、直近の出来高に対しては約1.6日分。
→ 解釈:「下げを買い向かった分の整理が進行中」という本文の見方は、7/24までの数字では続いている。なお7/27〜7/31週ぶんの残高は8/4(火)の公表待ちで、まだ分からない。

➡️ 今週、IHIからの適時開示は1件も出ていない(直近の開示は6/30のコーポレート・ガバナンス報告書)
→ 解釈:業績に関わる新しい数字は今週ゼロ。今週の値動きは、会社が出した新しい数字によるものではない。7/28に市場全体(TOPIX)が▼2.5%下げた日を含む週だった。

➡️ 前提1(防衛予算の拡大)に関わる業界の報道が続いた
7/26に日英伊の次期戦闘機GCAPの機体組み立てを国内(愛知)で担う方向と報じられ、7/28には通信衛星と安全保障を扱う記事、7/31には防衛省が護衛艦のトマホーク実射試験の実施を公表した。
→ 解釈:いずれもIHIが出した数字ではなく、業界の方向性の材料。前提1がまだ崩れていないことの確認材料にとどまり、今期の業績に結びつけられるものではない。

② 見立ては変わったか → 🟢 変更なし。今週は会社発の新しい情報がなく、業績側の前提は一つも動いていない。株価・需給の動きも、本文の見立て(1Q決算で「事業そのものの増益」が出ているかを確かめる)を崩す内容ではない。

③ 🔒 前回(7/26)条件の答え合わせ

(a) 8月上旬の1Q決算で、今期の営業利益+45%(2,400億円)計画への進捗——特に「事業の増益+293億円」の中身が出ているか
⏳ 進行中。7/31時点で1Q決算はまだ開示されておらず、会社からの正式な発表日の告知も確認できていない。過去の同四半期の開示は2025年が8/6の13:00、2024年が8/6の15:00、2023年が8/8の15:00。
(b) 25日線(2,803円)の上を維持できるか
❌ 未達。7/28(2,774.5円)・7/29(2,755.0円)・7/30(2,771.5円)の3営業日は終値が25日線を下回った。ただし7/31終値2,827.5円は25日線2,807.1円の上に回復して週を終えている。
(c) 7/6の戻り高値3,071円を出来高を伴って超えられるか
❌ 未達。今週の高値は7/27の2,925円で、3,071円まで146円届かなかった。

🔒 今週から凍結する確認条件(8/1〜・次回更新で答え合わせ)

(d) 1Q決算で、通期計画の「事業の増益+293億円」に対し、1Qのセグメント利益(防衛/民間航空エンジン)が前年同期からいくら増えたか
(e) 決算の開示日から5営業日のあいだ、終値が25日線(7/31時点2,807円)の上に留まるか、下に離れるか
(f) 8/4(火)公表の7/31付信用買い残が1,800万株を下回るか(整理の進行が続いているか)

④ 📅 次に見るもの——8/4(火)7/31付の信用残8/6(木)ごろ 1Q決算(2025年は8/6の13:00に開示。会社が正式発表したらカレンダー欄を確定日に置き換えます)・決算と同時に出る通期計画の据え置き/修正・同業(三菱重工・川崎重工)の決算。

📅 これからの予定 — IHI(7013)に関連するもの

未来のことで確定している数少ない事実=「いつ・何が出るか」。自社の予定だけでなく、市場全体の経済イベントもここに出ます。日付はすべて日本時間・日をタップすると詳細が表示されます。

7/30(木)★FOMC(米金融政策) 結果発表市場全体
日本時間 3:00 結果発表・3:30 議長会見
東京が反応する日: 7/30(木)
7/30(木)★日銀 金融政策決定会合市場全体
結果は7/31昼ごろ・総裁会見15:30
東京が反応する日: 7/31(金)
8/5(水)ごろ三菱重工業(7011) 1Q決算(予測日)同業・予測
過去2年は8/5・8/6の13:30(場中)開示。防衛・重工セクターの需給と評価に波及することがある。会社が正式発表したら確定日に置き換えます
8月上旬IHI(7013) 1Q決算発表(予測日)自社・予測
過去2年の同四半期は8/6・13:00の場中開示(=反応は当日の午後から)。会社が正式発表したら確定日に置き換えます
8/6(木)ごろ川崎重工業(7012) 1Q決算(予測日)同業・予測
過去2年はいずれも8/6・11:30(場中)開示。重工3社の決算が同じ週に集中する
8/6(木)〜8/7(金)ごろ三井E&S(7003) 1Q決算(予測日)同業・予測
過去2年は8/6・8/8の14:30(場中)開示。防衛(艦艇エンジン)関連の同業
8/7(金)★米雇用統計(7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/10(月)
8/12(水)★米CPI(消費者物価・7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/13(木)
8月末ごろ防衛省 概算要求(2027年度予算・例年8月末)防衛シグナル
来年度の防衛予算の要求額と重点項目が出る。防衛費GDP比2%路線の進み具合を確かめる定点。日付が固まったら置き換えます
10月下旬米防衛大手の3Q決算(ロッキード・ノースロップ・RTX)海外・参考
直近のQ2決算は7/21〜24に通過済み(NOC 7/21・LMT 7/23・RTX 7/24)。米防衛の受注動向は世界の防衛支出の温度計として参考になる
速報直近の動き — IHI(7013)に関連するかもしれないニュース
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株価と出来事(過去75営業日・調整後終値) 2026-04-24 → 08-14

丸い番号をタップすると、その出来事の「なぜ」に飛びます。

IR(会社発表) 業界・市場ニュース 思惑・材料ニュース 時系列の補足
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出典:株価・信用データはマーケットデータ、市場のできごとは適時開示ほか公開情報。金額は調整後終値。チャート:TradingView Lightweight Charts™

終値(調整後)
3,028円
2026-08-14(前日比+1.8%・TOPIX騰落率との差+1.3pt)
上場来高値からの下落
▼35.5%
高値4,698円(2026/02/10・取引時間中)から
直近2日の値動き
8/13+2.7%8/14+1.8%
直近2営業日の前日比
信用倍率
36.8倍
買い残1,856万株/売り残50万株(8/7公表・週次)

3つの視点で見る(2026-07-24時点)

ファンダメンタルズ

前期は受注・売上・営業利益・純利益すべて過去最高。今期も営業2,500億円(+51%・8/5上方修正)と3期連続最高を予想。ただし純利益は+7%(1,720億円)どまり——前期の純利益には税効果(+482億円)という一回きりの押し上げが入っていた反動で、EPSは151.88円→161.67円にとどまる。営業増益+845億円の中身も、不動産売却益930億円(前期224億円)が大きく、これを除いた不動産売却除く営業利益は1,431億円→1,570億円(+139億円)。実力の伸びはこの行で追うのが安全。

需給

信用買い残1,937万株はピーク(2,671万株・5/15)から▼27%。買い残のピークが高値の2月でなく下落中の5月に来ている=下げ局面を買い向かった資金が多かった証拠で、その整理が6月から続いている。1日の出来高約1,200万株に対して約1.6日分と回転は軽い(倍率48倍は売り残の少なさによる見かけで、大型株は回転日数で見る方が実態に合う)。1日の売買代金は平均490億円(直近60日)と厚く、板の薄さの心配はない。時価総額 約3.1兆円。

テクニカル

2月高値4,698円→6/11安値2,245円の▼52%調整を経て、7月は反発基調。いまの2,878円は25日線(2,803円)の上・7/6の戻り高値3,071円の下。確認は ①25日線の上を維持 ②戻り高値3,071円超え ③8月上旬の1Q決算 で。

※「上がる/下がる」の断定はしません。いまの状態の要約と、確認すべき条件です。詳しくは以下の各章で。

1

なぜ、150円だった株が4,698円になり、そこから4割下げたのか

一つの好材料で上がったのではありません。コロナで航空エンジン需要が消えた谷を土台に、防衛予算の倍増方針(2022年12月)、業績のV字回復と株式分割(2025年)、輸出ルール緩和とミサイル増産(2026年)が順に重なりました。表はいちばん上が根っこ(土台)で、下へ行くほど新しい話になります。

土台コロナの谷

航空エンジンの需要が消え、150円まで売られた 2020〜2022年

  • IHIの収益柱のひとつは民間航空エンジン——コロナで世界の空の便が止まり、整備需要も蒸発。2020年に150円(調整後・当時の実際の値では1,050円前後)まで売られた
  • 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻で防衛が世界的なテーマになり、同年615円まで回復。ただしこの時点ではまだ「テーマ」の域を出ない
  • 実はコロナ前の2016年3月期にも、民間エンジンや大型案件の損失で営業利益が220億円まで急減している(純利益15億円)。「大きな谷を掘っては直す」を繰り返してきた会社で、この谷の深さが後の上昇の出発点の低さになった
きっかけ防衛予算GDP2%

2022年12月、防衛費「5年で倍増」が決まる 2024年に年間3.5倍

  • 2022年12月の安保3文書で、防衛費をGDP比1%→2%へ引き上げる方針が閣議決定。IHIは戦闘機エンジン・ミサイル・ロケットの国内中核メーカーで、三菱重工・川崎重工とともに「防衛株」の代表格になった
  • 2024年、株価は390円→1,354円と年間で約3.5倍。ところが同じ2024年3月期、IHIは民間エンジン(PW1100G-JM)の追加検査プログラム費用などで営業▲701億円の大赤字だった
  • つまりこの上昇は「その期の利益」ではなく「防衛予算という将来」を買った動き——PERという物差しが利かない期間がここから始まった
二の矢V字回復と分割

2025年、利益が期待に追いつき、分割で個人が入った 10月に出来高10倍

  • 2025年3月期は営業1,435億円へV字回復(前期▲701億円)。「期待先行」だった株価に利益の実体が追いついてきた
  • 8/6、1Q決算と同時に1:7の株式分割を発表(10月効力)。最低投資金額が約250万円→約36万円に下がり、10月の1日平均出来高は4,300万株と分割前の10倍に膨らんだ
  • 個人資金の流入で10月に3,268円(調整後)まで上昇。11月の2Q決算では今期予想を上方修正(EPS 112.85円→117.49円)
三の矢輸出解禁と増産

2026年2月、決算の日に高値4,698円——そして反落 出来高7,660万株

  • 年明けから防衛関連の材料が続き、2/10の3Q決算(13:00・場中開示)の日に出来高7,660万株を伴って取引時間中4,698円の上場来高値。当日は+4.9%で引けた
  • しかし2営業日後の2/12は▼7.8%(TOPIXは+0.7%の日)——決算内容に驚きはなく、高値をつけた日が当面の天井になった
  • 5月末には装備移転「5類型」撤廃の政府決定が報じられ、IHIのミサイル部品増産も伝わったが、株価の調整はその後も続いた——材料の出る場所と株価の反応する場所がズレ始めたのがこの時期
増幅純利の壁

「営業+45%」の決算で、株価は下げた ▼52%調整の終盤

  • 5/8(13:00・場中)、本決算と今期予想を発表。受注1兆9,547億・売上1兆6,434億・営業1,655億・純利1,609億——すべて過去最高。今期も営業2,400億円(+45%)と3期連続最高益の予想。それでも当日は+0.5%止まり
  • 翌営業日5/11は▼6.2%(TOPIXは+0.3%)。理由は予想の中身にある——純利益は1,650億円で+2%しか増えない。前期の純利益には収益力向上に伴う税効果+482億円という一回きりの押し上げが入っており、その反動でEPSは155.09円とほぼ横ばい
  • さらに営業増益+744億円の内訳は、事業の増益+293億円に計画的な資産売却や前期費用の反動が乗った構成(会社の説明資料に明記)。「見出しの+45%」と「実力の+293億円」の距離に市場が気づき、決算後4日で▼12%。6/11の2,245円で調整が一巡した
たしかめ固有か地合いか

大きく動いた日を、市場全体(TOPIX)と並べる 連動も固有も両方ある

  • 固有の日——高値の反落2/12(▼7.8%・TOPIX+0.7%)、決算翌日5/11(▼6.2%・TOPIX+0.3%)。どちらも「純利の壁」と出尽くしという自社の理由で動いた
  • 地合いの日——7/17は市場全体の急落日(TOPIX▼2.7%)に▼5.1%。時価総額約3.1兆円・指数に組み込まれた大型株なので、市場全体が大きく動く日は一緒に動く
  • つまりこの銘柄は「防衛セクターの物語」と「日経・TOPIXの地合い」の両方に足を置いている。固有材料の日はIR・報道を、地合いの日は指数を見る——原因の切り分けがそのまま対処法になる
いまの位置
この2年の上昇は防衛予算の拡大という国の決定を起点に、業績のV字回復・株式分割・輸出ルール緩和が積み上げたものです。2月の高値4,698円は決算の日の出来高クライマックスで当面の天井になり、6/11の2,245円まで▼52%調整。7月は3,071円(7/6)まで戻したあと全体急落(7/17)で押され、いまの2,878円は25日線の上。次の答えは11月上旬の2Q決算——会社が併記する「不動産売却除く営業利益」(通期計画1,570億円)の累計がどこまで積み上がるかを確かめる日です
順番に注意 — この銘柄は「決算が昼に出る・見出しと実力がズレる」

① 開示は13:00、反応は当日の午後から
IHIの決算開示は13:00(昼休み明け直後)が定例です。2/10の3Q(当日+4.9%で高値)も5/8の本決算(当日+0.5%→翌日▼6.2%)も、当日の午後にまず反応が出て、翌日に本音が出るという2段構えでした。引け後開示の会社(翌日反応)とは時間の流れが違います。

② 「営業+45%」と「EPS+2%」——どちらも本当
今期予想は営業2,400億円(+45%)と純利1,650億円(+2%)が同居します。前期の純利に税効果+482億円という一回きりの押し上げが入っていたためで、どちらの数字を物差しにするかで割高感が全く変わります。株価はEPSの方(PER 18.6倍)を見て動いている、というのがこの2年の実測です。

③ 営業利益には資産売却が混ざる
前期の営業1,655億円には不動産売却益224億円が、今期の2,500億円にも930億円が含まれます(会社の説明資料に明記)。事業の実力は会社が併記する「不動産売却除く営業利益」の行で追う——前期1,431億円(売上収益比8.7%)→今期1,570億円(同8.5%)=+139億円、1Q実績は208億円→331億円(同6.2%→8.8%)です。決算説明資料でこの行を見る癖をつけると、この銘柄は読みやすくなります。

2

会社は大丈夫なのか(決算と、その土台)

短期の値動きから離れて、会社そのものを見ます。IHIは1853年(嘉永6年)の石川島造船所を起源とする重工大手——航空・宇宙・防衛(戦闘機エンジン・ミサイル・ロケット)、資源・エネルギー(原子力・アンモニア燃焼)、社会基盤(橋梁・シールド)、産業システム(車両過給機ほか)の4事業。東証プライム上場・3月決算(IFRS)。数字の出どころは決算短信・決算説明資料の実数です。

売上収益
1兆6,434億
→ 予想 1兆8,300億
2026年3月期実績(過去最高) → 2027年3月期会社予想(+11%)
営業利益
1,655億
→ 予想 2,500億
実績・率10.1% → 予想+51%・率13.6%(不動産売却除きでは8.7%→8.5%・+139億円)
純利益
1,609億
→ 予想 1,650億
実績は税効果+482億込み(EPS 151.88円)→ 予想EPS 155.09円(+2%)
配当
20円
→ 予想 23円
分割調整後ベース(実額は中間70円=分割前+期末10円)→ +15%の増配予想

直近4年の歩みと、その中身(営業利益)

  • 2023年3月期819億円 ── ウクライナ侵攻後の防衛テーマ化が始まった年。まだ利益は「ふつうの重工」の水準。
  • 2024年3月期▲701億円の大赤字 ── 民間エンジンPW1100G-JMの追加検査プログラム費用を一括計上。株価が年間3.5倍になったのと同じ期に、損益は最悪だった——期待と利益が最も乖離した年
  • 2025年3月期1,435億円へV字回復 ── 検査費用の峠を越え、防衛・原子力の受注が伸び始める。営業利益率8.8%。
  • 2026年3月期1,655億円(率10.1%)・全項目過去最高 ── 受注1兆9,547億円(原子力の大型案件など)・ROE28.4%・D/Eレシオは1.01→0.72倍へ改善。ただし営業には資産売却益+224億円、純利には税効果+482億円が入っており、「最高益」の一部は一回きりの要素

今期(2027年3月期)予想の読み方 ── 営業2,500億円(8/5上方修正・前期比+845億円)のうち、会社が不動産売却益として見込むのは930億円。これを除いた「不動産売却除く営業利益」は1,570億円で、前期1,431億円に対し+139億円——これが8/5時点で会社が示している事業側の伸びです。
なお5/8の初回計画(営業2,400億円)時点では、増減要因図に事業の増益+293億円・為替▲62億円・’25資産売却の反動▲224億円・その他+38億円(’25構造改革費用の反動+187億円と運搬機械など譲渡益の反動▲149億円)+地政学リスク等のバッファ、という内訳が示されていました。この+293億円は上の+139億円の内側にある一項目で、為替やバッファを差し引く前の数字です。二つを並べて足すことはできません(会社は8/5に+293億円の更新値を示していません)。達成の危うさを見るなら「為替」と「不動産売却の実行」を追う。

知っておきたい3つのこと

  • 1防衛は「受注→売上」に時間差がある
    防衛装備は受注から納入まで数年かかる長期契約で、いま取った受注が売上になるのは先。受注高(前期1兆9,547億円・過去最高)と受注残が先行指標、売上・利益は遅行指標という時間差の構造。株価は受注・予算のニュースで先に動き、利益は後から追いつく——2024年に赤字でも株価3.5倍になったのはこの構造ゆえ。
  • 2民間エンジンは「作るほど短期の利益が減る」
    新品エンジンは戦略的に安く売り、就航後の整備・部品(アフターマーケット)で長期に回収するビジネスモデル。新製エンジンの販売台数増は短期的に利益を押し下げる(会社が明記)。今期の「新製エンジン▲113億円」はその表れで、悪化ではなく将来の整備需要の仕込み。PW1100G-JMの追加検査は影響総額(ドル建て)に変動なしと会社は説明している。
  • 3注意点
    為替感応度20億円/円——前提145円より円高に振れると利益が削れる ②純利益は一回きり要素でブレる(前期の税効果+482億円→今期は+40億円しか増えない予想の主因) ③事業売却を13件実行中(物流システム・ボイラ・交通システム等)——ポートフォリオ改革として計画的だが、売却益が利益の見かけを膨らませる年が続く ④過去の大きな利益の谷(2016年3月期・2024年3月期)はいずれも民間エンジンや大型案件の損失発生が絡む——再発が最大の固有リスク。

この強さを1本の鎖にすると(成立を確認する順番)

防衛予算GDP2%と航空需要の拡大 受注高・受注残の積み上がり 四半期の「事業の増益」(8月上旬〜) 営業2,400億円の達成 EPS 155.09円=PER 18.6倍の妥当性

この鎖のどこかが切れると、下の「前提」が崩れます。確認の場は四半期決算(13:00開示)と防衛・エネルギー政策のニュース。受注は先に見えるぶん、鎖の弱点は「利益への転換」と「為替」に集中しているのがこの銘柄の特徴です。

ただし2026年度1Qでは、増益の出どころはこの順路の外にあった——航空・宇宙・防衛の営業利益は279億円→291億円(+12億円・率21.9%→18.9%)にとどまり、増減要因には為替+29億円が含まれる。1Qの増益を押し上げたのは資源・エネルギー・環境(△33億円→28億円)と産業システム・汎用機械(3億円→55億円)だった。会社は防衛の拡大は下期と説明しており、1四半期で順路が崩れたとは言えないが、成長事業が四半期の利益を牽引しているかは四半期をまたいで確かめる論点になった。
外れる条件:2Q決算(11月上旬ごろ)でも航空・宇宙・防衛の営業利益率が18.9%から回復せず、通期の不動産売却除く営業利益の累計進捗が1,570億円の40%(628億円)に届かない場合、この順路の書き方は見直す。

その数字の土台にある「前提」──これが生きている限り強さは続く

短期の上げ下げの土台にある「前提」です。この前提が生きている限り会社の強さは続き、崩れたら話が変わります

成立条件と崩壊条件
この会社の強さが続くために必要な前提と、崩れる合図
前提 1防衛予算の拡大

防衛費GDP比2%への拡大路線と、装備輸出の緩和が続く

  • ミサイル量産・GCAP(日英伊の次期戦闘機)・装備移転5類型撤廃——IHIの成長シナリオの第一の柱。中期計画の投資6,500億円もこの前提の上にある
  • 崩れるサイン:防衛予算の削減・執行の遅れ/大規模な停戦・緊張緩和で防衛セクター全体の評価が下がる(業績より先に株価に来る)/GCAPの計画変更
前提 2エンジンの品質

民間エンジンで、3度目の大穴を掘らない

  • 2024年3月期の営業▲701億円(PW1100G-JM)をはじめ、過去の大きな利益の谷は民間エンジン・大型案件発。現在は影響総額に変動なしと会社が説明しており、アフターマーケット事業は堅調に拡大中
  • 崩れるサイン:PW1100G-JM関連の影響総額の増額修正/新たな検査・リコールの開示/エアラインからの補償請求の拡大
前提 3為替と実行

145円/ドル前提が大きく崩れず、資産売却が計画どおり進む

  • 感応度は20億円/円(会社開示・前提145円/ドル)。仮に10円の円高なら▼200億円で、不動産売却除く増益+139億円と同程度以上の規模になる計算。営業2,500億円には不動産売却益930億円も織り込まれており、市況次第の要素が2つ入っている
  • 崩れるサイン:ドル円が140円を大きく割れて定着/資産売却の延期・中止/四半期進捗が通期計画を大きく下回る
遠い脅威構造変化

脱炭素の揺り戻しと、重工3社の競争構造

  • 原子力・アンモニアはエネルギー政策の追い風を受けるが、政策は選挙・国際情勢で揺れる。カーボンソリューション事業(海外)はすでに清算・売却で撤退戦に入っており、エネルギー分野は「原子力とアンモニアに賭け直した」状態
  • 防衛の国内発注は三菱重工・川崎重工との分担構造で安定的だが、輸出市場では海外大手との競争になる。輸出解禁は機会と競争の両方を連れてくる
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いまの株価は割高か、割安か(PERの水準が切り上がった話)

PER=株価が「1年分の利益」の何倍まで買われているか。数字が大きいほど、期待が多く乗っている状態です(その時点で公表されていた会社予想の1株利益で計算・株式分割は調整済み)。

PERの推移(直近2年・日次) 2024-05 → 2026-08-14

計算:その日の終値 ÷ その時点で公表済みの会社予想1株利益(分割調整後)。IHIの決算開示は13:00(場中)のため当日から、引け後開示(2024/5/8)のみ翌営業日から分母に反映。

いま
PER 18.7倍
2026-08-14(終値ベース・会社予想EPS 161.67円)
直近2年の中央値
18.6倍
およそ10〜38倍のレンジで推移
2年前(2024年5月)
10.4倍
当時の予想EPS 56.43円(分割調整後)・終値ベース

読み方 ── この2年でPERは10.4倍→高値時38倍→いま18.6倍と動きました。利益も伸びましたが、それ以上に「PERの水準そのものが切り上がった」(リレーティング)のがこの銘柄の本質です。防衛という長期テーマに、市場が「ふつうの重工」より高い物差しを許した——いまの18.6倍は、2月の38倍からは大きく冷えた一方、2024年の10.4倍に戻るとも見られていない、「新しい物差しがどこで落ち着くか」を探している途中の値です。EPSがほぼ横ばい(+2%予想)のいま、株価の変動はほぼそのままPERの変動=期待の増減を意味します。

いまの株価に織り込まれている前提

いまの2,744.5円(8/7終値)は、「防衛予算の拡大が続き、営業2,500億円(うち不動産売却除き1,570億円=前期比+139億円)が達成される」という前提を織り込んだ値段です。前提のくわしい中身は上の②で見た3つ。

崩れる合図──8月上旬の1Q決算で事業の増益が確認できない/円高の進行(前提145円・感応度20億円/円)/防衛政策の後退や大規模な緊張緩和。どれかが出たら、このページの見立ては見直しです。

4

価格の地図——過去1年、どの値段で折り返してきたか

売買の指示はしません。過去1年の値動きが「どの価格帯で折り返してきたか」を、機械的なルールで塗った地図です。決めるのは、この地図を見たあなたです。

価格の地図(直近1年・調整後終値) 2025-07-29 → 2026-08-10

この地図には2種類の帯があります。面の帯(塗り)=10日以上離れて3回以上、値動きが折り返した価格帯。青の斜線=下げ止まりの記録がある支持帯、橙の点=上値を抑えられた記録がある抵抗帯枠の帯(囲み)=大きな値動きが始まった起点の値幅(青枠=上向き、橙枠=下向きの起点)。帯の位置は機械的なルールで引き、名前(支持帯・抵抗帯・上場来高値の帯など)は分かりやすさのための呼び名です——手で選んでいません。チャート上の①〜⑤は、下の説明と対応しています。各帯のPERは会社予想EPS 161.67円(2027年3月期・2026-08-05開示)で換算した参考値で、予想EPSが変わればPERの位置も動きます。現在値 2,759円は③25年12月の大きな上げの起点の帯(2,733〜2,794円)の中にあります。

① 抵抗帯 3,116〜3,302円(25年10月〜26年7月に3回反落・PER19.3〜20.4倍)

接触3回:反落3・上抜け0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=10/09、10/28、07/07

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

② 抵抗帯 2,991〜3,132円(25年12月〜26年6月に3回反落・PER18.5〜19.4倍)

接触3回:反落3・上抜け0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=12/09、05/26、06/18

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

③ 25年12月の大きな上げの起点の帯 2,733〜2,794円(いまの株価がいる帯・PER16.9〜17.3倍)

2025-12-30から5営業日で+17.4%の上げが始まった日の値幅(6.0ATR)|その後の再訪5回:下げ止まり1・割れ3・未決着1|④の帯と一部交差

④ 支持帯 2,579〜2,745円(25年10月〜26年7月に5回下げ止まり・PER16.0〜17.0倍)

接触5回:下げ止まり5・割れ0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=10/14、11/25、12/18、07/01、07/17

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

⑤ 支持帯 2,154〜2,349円(25年8月〜26年6月に3回接触・PER13.3〜14.5倍)

接触3回:下げ止まり2・割れ0・未決着1|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=08/07、09/18、06/11

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 530〜548円(23年9月の大きな下げの起点・現換算PER3.3〜3.4倍)

5営業日で-18.8%の下げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 1,247〜1,283円(25年2月の大きな上げの起点・現換算PER7.7〜7.9倍)

5営業日で+30.9%の上げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 390〜399円(24年2月の大きな上げの起点・現換算PER2.4〜2.5倍)

5営業日で+10.3%の上げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

◽ 参考(直近3年・直近1年より前)——ほか1本を開く
759〜796円(24年7月の大きな下げの起点・現換算PER4.7〜4.9倍)

5営業日で-23.8%の下げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

参考:PERの物差し(会社予想EPS 161.67円=2027年3月期予想・2026-08-05開示)

13倍=2,102円/14倍=2,263円/16倍=2,587円/17倍=2,748円/19倍=3,072円/20倍=3,233円。現値2,759円≒PER17.1倍。

※PERは会社予想が変わればラインごと動きます。帯とPER水準が重なるのは結果であって、どちらかが根拠というわけではありません。

⚠ 過去に折り返した帯・値動きの起点の帯は約束ではありません。支持帯を終値で2日連続下回った場合は、その帯の下げ止まり記録が崩れたものとして、次の開示と市場全体の地合いを確認します。帯のルール=面の帯:10日以上離れた接触3回以上・幅は接触価格±0.25ATR/枠の帯:直前5日の終値最安(最高)の日から5営業日以内に3.0ATR以上動いた日の値幅(値動きの大きい順に各方向3本まで・今回ほかに4本の起点を省略)。この帯は毎週、同じルールで機械的に引き直します。

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テクニカルと需給の現在地

下値の目安・窓・移動平均線をチャートに示しました。

下値の目安とサイン(日足75本) 〜2026-08-14

↓印=窓開け(前日から飛んで下げた日)。縦軸=株価(円)・横軸=日付。線の意味は下の説明と色で対応。

━ 青い線=25日線(2,803円)6月までの下落局面では上値の蓋だったが、7月の反発で株価が線の上に出た。いまの2,878円は線の+2.7%上
━ 赤い点線=押し安値(2,626円)7/17(市場全体の急落日)の安値。7月の反発の中でつけた押しの目安で、ここを終値で割ると短期の流れが下向きに戻るサイン
━ 灰色の点線=年初来安値(2,245円・6/11)▼52%調整の底。ここを割ると2月からの下げが「調整」から「トレンド転換」に変わる(強い警戒)
上の節は3,071円(7/6)6月安値からの戻り高値。ここを出来高を伴って超えると、6-7月の底値圏が「底打ち」として確定に近づく
200日線は3,123円長期トレンドの物差し。急騰期に大きく上に離れた後、いまは株価が線を下から試す位置関係(フル指標版で確認できます)
上場来高値 4,698円(2026/2/10・取引時間中)3Q決算の日に出来高7,660万株を伴ってつけた天井。ここまでの間には3,300〜3,500円台(4月の戻り売り帯)など複数の節が残る

信用残の1年

信用買い残(あとで売る予約)/信用売り残(あとで買い戻す予約)の推移(株式分割前の週は7倍換算で連続化)

信用残(週次)と売買代金 2025-07 → 2026-08-14

左目盛:万株(線)。下の棒:1日の売買代金(億円)。信用残は週1回の公表。2025/10/1の1:7分割前の週は株数を7倍に換算して接続。

━ 赤い線=信用買い残(あとで売る予約)分割直後の急騰期(2025年10月)にまず膨らみ、下落局面の2026年5月に難平・逆張りの買いで2,671万株のピーク(5/15)→いまは1,937万株(7/17公表)=▼27%。高値づかみと下値買いの整理が6月から進行中
━ 青い線=信用売り残(あとで買い戻す予約)40万株と少なく、信用倍率は48倍。倍率の高さは売り残の少なさによる見かけで、買い残は1日の出来高の約1.6日分=大型株としては重くない
棒グラフ=売買代金1日平均約493億円(直近60日)と厚く、決算日は1,000億円超に膨らむ。時価総額 約3.1兆円の大型株で、流動性の心配はない

まとめ ── 需給の重し(信用買い残)は下落局面で膨らんだ分の整理がピーク比▼27%まで進み、回転も軽い。トレンドは6月に底をつけて反発中だが、上には戻り売りの節が続く。全体の結論は最終章「総合判断」へ。

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総合判断と、今後の注目点

ここまでの整理 ── ファンダメンタルズ:全項目過去最高で3期連続最高益予想。ただし純利は+7%で、営業+51%には不動産売却益930億円が混ざる——実力は「不動産売却除く営業利益(今期1,570億円・+139億円)」で追う/需給:買い残は5月ピーク比▼27%・回転約1.6日分と軽い/テクニカル:▼52%調整から反発中・25日線と戻り高値3,071円の攻防。そのうえで、上と下、両方の「確認のサイン」を置いておきます。

✅ 反転・続伸が「本物」と確認できるサイン(上向き)

  • 11月上旬の2Q決算で、不動産売却除く営業利益の累計が通期計画1,570億円に対しどこまで積み上がるか(1Qは331億円=21.1%。前年同期は208億円=前期実績1,431億円の14.5%)。あわせて航空・宇宙・防衛の営業利益率が1Qの18.9%からどう動くか
  • 受注高・受注残の積み上がりが続く(防衛・原子力の大型案件)
  • 25日線(2,803円)の上を維持し、戻り高値3,071円(7/6)を出来高を伴って超える
  • 信用買い残の減少が続く(整理が進んだまま上値を試せるか)

⚠ 調整継続・警戒のサイン(下向き)

  • 押し安値2,626円(7/17)を終値で割り込む
  • 年初来安値2,245円(6/11)割れ=2月からの下げが「調整」から「転換」へ(強い警戒)
  • 1Q決算で事業の増益が確認できない/PW1100G-JM関連の影響総額の増額修正
  • 円高の進行——前提145円・感応度20億円/円。140円割れの定着は計画の土台を削る
  • 防衛政策の後退・大規模な停戦や緊張緩和——業績より先に、セクター全体のPER(期待)に来る

📅 次に見るカレンダー

  • 8月上旬(済):第1四半期決算──8/5・13:00に開示。不動産売却除く営業利益は1Qで331億円=通期計画1,570億円の21.1%(前年同期は208億円=前期実績の14.5%)
  • 7/30:FOMC・日銀会合——大型株ゆえ、金利と為替のイベントは指数経由で直撃する
  • 毎週:信用残の公表(買い残の再増加=過熱のサイン)
  • 随時:防衛関連の政策・報道(装備輸出・ミサイル量産・GCAP)と、ドル円の水準(前提145円)
  • 11月上旬:第2四半期決算(前年は11/6)——上期での通期進捗と、資産売却の実行状況

🧾 ニュースの見立てと答え合わせ — IHI(7013)

読み込み中…
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出典・参考資料

このページの「なぜ」は、以下の適時開示と市場データをもとに、アルミナが整理・解釈したものです。

出典をすべて見る(タップで開く)

IHIの適時開示・説明資料(一次情報)

  • 2024/5/8 2024年3月期 決算短信〔IFRS〕──営業▲701億円(PW1100G-JMエンジン追加検査プログラム関連)の出典
  • 2025/5/8 2025年3月期 決算短信〔IFRS〕──営業1,435億円へのV字回復・2026年3月期予想(EPS 112.85円=分割調整後)の出典
  • 2025/8/6 株式分割および株式分割に伴う定款の一部変更ならびに配当予想の修正に関するお知らせ──1:7分割(2025/10/1効力)の出典
  • 2025/11/6 2026年3月期 第2四半期決算短信──通期予想の上方修正(EPS 117.49円)の出典
  • 2026/2/10 2026年3月期 第3四半期決算短信──高値4,698円の日の開示(13:00)
  • 2026/5/8 2026年3月期 決算短信/2025年度 決算説明資料(IFRS)──全項目過去最高(受注1兆9,547億・売上1兆6,434億・営業1,655億・純利1,609億)・今期予想(営業2,400億・純利1,650億・EPS 155.09円)・営業増益の内訳(事業の増益+293億・為替▼62億・資産売却)・税効果+482億・為替前提145円/感応度20億円・配当23円予想・事業売却13件の一覧の出典
  • 2026/5/8 決算説明会「中長期の方向性」および「経営概況」──2040年ビジョン(For Industry & National Security)・投資6,500億円(FY26-28・研究開発1,600億円含む)・防衛予算GDP比1%→2%・GCAP・ミサイル量産・原子力/アンモニア戦略の出典
  • IHI 公式サイト(決算短信・説明資料の原本は公式サイトIRページから)

報道・公的資料

  • 防衛装備移転「5類型」撤廃の政府決定・IHIのミサイル部品増産(2026年5月末の各社報道)
  • Kuva Space社との衛星コンステレーション協力(2026/7/22・会社発表および各社報道)
  • 防衛予算GDP比2%方針:防衛白書(防衛省)/宇宙市場規模目標:宇宙基本計画(内閣府)——いずれもIHI決算説明資料の引用出典に基づく

データの出典

  • 株価・出来高・売買代金・信用残・TOPIX:証券取引所が公表する市場データ・各社の決算資料をもとにアルミナが整備したデータベース(株価・株数は2025/10/1の1:7分割・2017/10の10:1併合を調整済み)
  • PER・移動平均・RSI等の指標:上記データからアルミナが算出(計算方法は各章に記載)
  • 開示の時刻(13:00等):適時開示の公表時刻の実データ(「当日午後に反応」の判定に使用)

決算数値は適時開示の実数。セグメント・増減要因は会社説明資料の記載に基づきます。

このページの約束:①嘘を書かない ②煽らない ③外れる条件(見直しのサイン)を必ず書く ④どこにも誘導しない。「上がる/下がる」は言い切らず、しくみ・事実・見直しの条件・見ておく場所だけをお伝えします。