銘柄レポート🔖 毎週土曜更新

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)株価分析 機械

営業利益26億円だった会社に、株式市場は約6,900億円(8/7終値ベース)の値段をつけている。会社が8/7に引き上げたばかりの通期計画(営業85億円)で割っても81年分だ。この倍率の分母は、決算書のどこにもない。「ロボットの関節」を握るニッチ独占への、先行チケット代だ。
ハーモニック・ドライブ・システムズがつくるのは波動歯車減速機——モーターの高速回転を、ロボットの腕が使える精密な力に変換する部品で、産業用ロボットの関節にこの種の減速機が広く使われる。小型精密減速機で世界首位とされるニッチトップ企業だが、売上約600億円と会社の器は小さく、業績はロボット業界の設備投資サイクルで大きく振れる。株価は2月の安値3,330円から7月に8,890円へ+167%急騰し、いま7,160円(8/7終値・高値から▼19%)。この急騰と時期が重なるのが、会社が決算短信に明記した「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注」という一行だ。何が確認済みで、何がまだ期待なのか、8/7に発表された1Q決算(同時に通期業績予想の修正)で何が示されたのかを、この1ページで整理する。

ハーモニックの今と見どころ📊 株価データ:2026-08-14終値(毎日夜更新)
✍ 見立て・本文:2026-08-08執筆(週1+イベント時更新)
次回の本文更新:8/15(土)ごろ
30秒だけの人へ
  • 2026年3月期の連結受注高は616億円(前期比+16.2%)で売上(595億円)を上回った。会社が挙げた中身は①産業用ロボット向け=自動化投資 ②半導体製造装置向け=生成AI関連の設備投資が年明け以降拡大 ③「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注を獲得」(短信の記述そのまま)。営業利益は前期のほぼゼロ(600万円)から25.7億円へ戻り、会社想定を上回った——ただし営業利益率はまだ4.3%
  • 株価は2/2の安値3,330円から7/6の高値8,890円(終値)まで+167%、そこから▼19%の7,160円(8/7終値・終値どうしの比較)。8,890円は2020年12月の高値9,380円(調整後終値・このページのデータベースで確認できる範囲の最高値)に▼5%まで迫った水準だった。7月の下げの間、業績に関わる会社の開示はなかった(7/15の譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分、7/30の有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書のみ)——上げも下げも、材料の中心は決算ではなく「AIロボット(ヒューマノイド)」というテーマの温度だった可能性が高い。8月に入って株価は戻し、8/3〜8/7の週は+16.6%(同じ週のTOPIXは+1.8%)。
  • 焦点だった1Q決算は8/7の取引終了後に発表され、通期業績予想の修正が同時に開示された。8/3に固定した3つの見どころに事実を当てると——①受注=241億28百万円(前年同期比+55.7%。置いていた目安は四半期154億円) ②「AIロボット向け」の記述=今回の短信本文には現れず、受注増の説明は国内・欧州の産業用ロボット向け/生成AI関連の半導体製造装置向け/北米の手術支援ロボット向けのまとまった受注 ③営業利益=1Q 18億40百万円、通期計画は62億円→85億円へ。会社予想PERは修正後の予想EPS 63円38銭で113倍(8/7終値。この終値は開示より前についた値段)。この値段は計画達成だけでは説明しきれず、その先の量産期待まで含めた値段と読むのが自然だ——だから受注と記述の変化が、値段の土台に直結する。東証での値付けは8/10(月)から。
いまの状態
業績2027年3月期1Q実績(8/7開示)=売上166.8億円(+23.6%)・営業18.4億円(前年同期1.2億円)・受注241.3億円(+55.7%)。通期計画は同日に上方修正=売上745億円(前期比+25.1%)・営業85億円(同+231.1%・利益率11.4%)。前期実績は売上595.6億円・営業25.7億円・受注616億円 株価の流れ2/2安値3,330円→7/6高値8,890円(+167%)→7,160円(8/7終値)。高値から▼19%。週間では+16.6%(同じ週のTOPIXは+1.8%) 需給信用倍率1.83倍(7/31時点)。買い残75.3万株・売り残41.0万株。前週(7/24時点)は2.21倍・買い残82.5万株。買い残は1日の平均出来高(7月・約192万株)の半分以下 割安度会社予想PER 113倍(8/7終値÷修正後の予想EPS 63.38円)。実績PERは421倍。どの利益で割っても市場全体の目安を大きく超える——この数字の読み方が第3章の主題
読みたいところへ
📝 今週なにが変わったか 8/8更新

📌 今週の要点:週間は+16.6%(7/31終値6,140円→8/7終値7,160円。同じ週のTOPIXは+1.8%)。8/7の取引終了後(16:00)に1Q決算と通期業績予想の修正が同時に開示された。4〜6月の連結受注高は241億28百万円(前年同期比+55.7%)、通期の営業利益計画は62億円→85億円へ。ただし8/7終値7,160円はこの開示より前についた値段で、値付けは8/10(月)から

① 新しく分かったこと
8/7 16:00 / 2027年3月期 第1四半期決算短信——売上高166億81百万円(前年同期比+23.6%)、営業利益18億40百万円(前年同期は1億22百万円)、経常利益17億19百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益12億74百万円(前年同期は38百万円の四半期純損失)。連結受注高241億28百万円(+55.7%)・受注残高294億57百万円(+45.6%)。決算説明資料の四半期の並びでは、25_1Q 155億01百万円 → 25_2Q 176億17百万円 → 25_3Q 140億18百万円 → 25_4Q 144億76百万円 → 26_1Q 241億28百万円
短信が受注増の中身として挙げたのは、①国内および欧州の産業用ロボット向けの増加(中国向けは減少) ②生成AI関連を中心とした先端半導体分野の設備投資需要を背景とした半導体製造装置向け ③北米市場における手術支援ロボット向けのまとまった受注——の3つ。地域別のセグメント利益は日本21億66百万円(+214.0%)、中国97百万円(△35.8%)、北米1億65百万円(前年同期は38百万円の損失)、欧州1億40百万円(前年同期は79百万円の損失)。
8/7 16:00 / 業績予想の修正——通期は売上高680億円→745億円、営業利益62億円→85億円、経常利益62億円→82億円、当期純利益45億円→60億円、1株当たり当期純利益47円54銭→63円38銭。中間期も売上高335億円→357億円、営業利益30億円→37億円へ。修正後の通期売上は前期(595億57百万円)比+25.1%、営業利益は前期(25億67百万円)比+231.1%、営業利益率は11.4%の計算になる。配当予想は年20円で修正なし
8/5——譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分の払込完了(7/15公表分の完了通知)。
需給——信用買い残752,500株・売り残410,400株・信用倍率1.83倍(7/31時点)。前週(7/24時点)は824,500株/373,300株/2.21倍。

② 見立ては変わったか🚩要検討。軸に置いてきた「受注(量)とテーマ(期待)の二階建て」という構造そのものは、今回の開示でも変わっていない。ただし本文の「数字で確認できているのは受注+16.2%と営業黒字回復まで」という書き方は、四半期受注241億28百万円と通期営業利益85億円への修正を受けて、確認できている範囲が前より広くなった。一方で、短信の本文に「AIロボット向け」の語は今回現れていない(「生成AI関連」は半導体製造装置向けの文脈で使われている)。一階(数字)と二階(テーマ)の書き分けをどう改めるかは本文の判断が要るため、ここでは印を付けるだけにして、本文と第3章のPERの前提は自動では書き換えない。

③ 🔒 前に見ていた材料、その後(8/3に書いたまま・書き換えていません)
(a) 4〜6月の受注高:「154億円以上/140億円を下回る」という目安を置いていた。実績は241億28百万円。前年同期の155億01百万円に対して+55.7%で、決算説明資料に載る直近5四半期のなかで最も大きい。
(b)「AIロボット向け」の記述:今回の短信本文に「AIロボット」という語は出てこない。受注増の説明として書かれたのは、国内・欧州の産業用ロボット向け、生成AI関連の半導体製造装置向け、北米の手術支援ロボット向けのまとまった受注の3つ。決算説明資料の「連結用途別受注高」には「AIロボット」の区分が引き続き置かれている(区分ごとの金額はグラフからは読み取れないため、ここでは金額を書かない)。
(c) 営業利益:「2Q累計計画30億円の単純半分=15億円が計画線」という目安を置いていた(会社が開示した1Q単独の計画ではなく、こちらで機械的に按分した線)。1Q実績は18億40百万円。会社はこの決算と同時に中間期計画を37億円、通期計画を85億円へ修正しており、1Qは修正後の中間期計画に対して49.7%、通期計画に対して21.6%にあたる。
(d) 判定の窓:開示は8/7の16:00=取引終了後だった。したがって8/7終値7,160円にはこの内容は入っていない。値付けは8/10(月)からで、観測はここから始まる。

🔒 今週からの観察ポイント(あとから書き換えず、翌週に事実と突き合わせます)
(1) 8/10からの3営業日の終値:8/11は山の日で休場のため、対象は8/10・8/12・8/13の終値。起点は開示前の8/7終値7,160円。同じ期間のTOPIXの騰落を並べて置く(市場全体の波と区別するため)。
(2) 7〜9月(2Q)の受注高:26_1Qの241億28百万円には北米の手術支援ロボット向け「まとまった受注」が含まれる。次の四半期の受注高がこの水準の近辺に残るのか、前期の帯(140〜176億円)に戻るのか。判明は11月中旬の2Q決算。
(3) 信用残:7/31時点で買い残752,500株・倍率1.83倍(買い残は2週前の867,400株から減っている)。上方修正をはさんだ次の集計で、買い残がどちらへ動くか。

④ 📅 次に見るもの——8/10(月)以降の値付け(8/11は休場)→ 8/7時点の信用残(8/12〜13ごろ公表)→ 11月中旬の2Q決算(例年実績)。この間に会社から追加の開示が出た場合は翌週の欄で拾う。
確認済み(機械監視): 業績開示=1Q決算・業績予想の修正(8/7 16:00) / 需給=信用倍率1.83倍(7/31時点) / 株価=7,160円(8/7終値)・7月高値8,890円の▼19%下 / 会社予想PER=113倍(8/7終値÷修正後の予想EPS 63.38円)・実績PER=421倍

前回(8/3)の記録

📌 今週の要点:このページの初回公開。1Q決算の発表が目前(例年8月上旬・前年は8/6)のため、発表前に「ここを見る」を下に固定しておく(あとから書き換えません)。直近の株価は7月高値8,890円から▼29%の調整中で、この間に会社の適時開示はない。

① 新しく分かったこと
初回のため過去分から——5/13のFY決算で受注616億円(+16.2%)と「AIロボット向け量産移行の受注獲得」が開示され、株価は5月から7月にかけてテーマの温度とともに上値を追った(7/6高値8,890円)。7月後半は市場全体の急落(7/28・TOPIX▼2.5%)の波と重なって調整。個別の悪材料開示はない。

② いまの見立ての軸(初回のため固定)——「受注(量)とテーマ(期待)の二階建て。数字で確認できているのは受注+16.2%と営業黒字回復まで。PER133倍の残りの部分は、AIロボット量産が実需に育つかに懸かっている」

③ 🔒 1Q決算でここを見る(発表前に固定・あとから書き換えません)
(a) 4〜6月の受注高154億円以上=前期の勢い(年616億円÷4)を維持/前年同期を上回るか(前期は年間+16.2%)/140億円を下回る=勢いに黄信号(四半期平均154億円を1割近く下回る。154〜140億円の間は「減速」として用途別の説明を確認)。※四半期の季節性は考慮しない機械的な目安
(b) 「AIロボット向け」の記述:量産移行の受注が「継続・拡大」の方向で書かれるか、記述が後退するか(この銘柄は定性の一行が値段に直結する)
(c) 営業利益:2Q累計計画は30億円(会社開示)=単純半分で1Qは15億円が計画線。通期62億円(前期比+141.5%)の軌道に乗って見えるか
(d) 判定の窓:発表が引け後なら、値付けの本番は発表の翌営業日。そこから3営業日の終値までをTOPIXとの相対で観測する(市場全体の波と区別するため)。決算直後の1日の反応だけでは判定しない。

④ 📅 次に見るもの——1Q決算(例年8月上旬・確定日は上の予定欄に自動反映)→翌営業日からの値付け・毎週の信用残の公表・11月中旬の2Q(例年実績)。
確認済み(機械監視): 業績開示=今週なし / 需給=信用倍率2.2倍(7/24) / 株価=7月高値8,890円の▼29%下 / 会社予想PER=133倍(8/3終値)

📅 これからの予定 — ハーモニック(6324)に関連するもの

未来のことで確定している数少ない事実=「いつ・何が出るか」。自社の予定だけでなく、市場全体の経済イベントもここに出ます。日付はすべて日本時間・日をタップすると詳細が表示されます。

8/7(金)★米雇用統計(7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/10(月)
8/12(水)★米CPI(消費者物価・7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/13(木)
8月上旬ハーモニック(6324) 1Q決算発表(例年実績から)自社
前年は8/6の引け後開示(=反応は翌営業日)。過去5年の中心は8/7ごろ。会社が正式発表したら確定日に置き換わります
速報直近の動き — ハーモニック(6324)に関連するかもしれないニュース
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株価と出来事(過去75営業日・調整後終値) 2026-04-24 → 08-14

丸い番号をタップすると、その出来事の「なぜ」に飛びます。

IR(会社発表) 業界・市場ニュース 思惑・材料ニュース 時系列の補足
出来事のくわしい一覧(4件・タップで開く)

出典:株価・信用データはマーケットデータ、市場のできごとは適時開示ほか公開情報。金額は調整後終値。チャート:TradingView Lightweight Charts™

終値(調整後)
6,510円
2026-08-14(前日比▼3.6%・TOPIX騰落率との差▼4.1pt)
2020年高値からの下落
▼31.5%
高値9,510円(2020/12/28・取引時間中)から
直近2日の値動き
8/13+5.5%8/14▼3.6%
直近2営業日の前日比
信用倍率
1.3倍
買い残68万株/売り残51万株(8/7公表・週次)

3つの視点で見る(2026-08-10時点)

ファンダメンタルズ 1Qで営業利益率11.0%まで戻り、会社は通期計画を11.4%(営業85億円)へ引き上げた(8/7)。入口(1Qの受注)は241億円・+55.7%で確認できた。次の関門は下期に要る営業利益率12.4%と、北米のまとまった受注を除いた受注水準が続くか。

需給 信用買い残75.3万株・売り残41.0万株=信用倍率1.83倍(7/31公表)。前週(7/24公表)は2.21倍・買い残82.5万株。買い残の絶対量は1日の平均出来高(7月・約192万株)の半分以下(残高と出来高は性質が違うため、この比は目安にすぎない)。

テクニカル 8/7終値7,160円は7/6高値8,890円の▼19%下・2/2安値3,330円の+115%上=急騰の中腹での戻り。確認は①7月からの調整で安値を切り上げられるか ②高値8,890円と2020年高値9,380円の間の壁 ③1Q開示(8/7 16:00)後の値付け——の3点。

※「上がる/下がる」の断定はしません。いまの状態の要約と、確認すべき条件です。詳しくは以下の各章で。

1

なぜ、半年で+167%になり、そこから▼31%下げたのか

一つの決算で上がったのではありません。2025年度の「利益ほぼゼロ」の谷を底に、受注の回復が数字で見え始め、そこに「AIロボット」というテーマの熱が乗って7月の高値まで運んだ——という一年です。表はいちばん上が根っこ(土台)で、下へ行くほど新しい話になります。

土台ロボットの関節

波動歯車減速機のニッチ独占——器は小さく、振れは大きい 売上600億円・世界シェア圧倒的

  • 波動歯車減速機=モーターの高速回転を減速して、ロボットの腕が使える精密な力(トルク)に変える部品。小型・軽量・バックラッシ(ガタ)がほぼゼロという特性から、産業用ロボットの関節・半導体製造装置の位置決めに広く使われる。この分野で世界首位とされる
  • ただし会社の器は売上595億円と小さく、費用に占める固定費(工場)が重い。稼働率が下がると利益が消え、上がると戻る——2025年3月期の営業利益は600万円(利益率0.01%)、2026年3月期は25.7億円(4.3%)。利益率の振れがこの商売の性格を物語る
  • 製品構成は減速装置が売上の77.8%(463億円・前期比+9.5%)、メカトロニクス製品が22.2%。利益の柱は日本セグメント(売上266億円・+22.5%、経常利益36.9億円・+66.1%=稼働率上昇で原価率が改善)
前夜2025年度の谷

営業利益600万円——ゼロ近傍まで落ちた稼働率 株価は2/2に3,330円

  • 2025年3月期は産業用ロボット・半導体製造装置の設備投資調整が直撃し、売上556億円・営業利益600万円とほぼ損益ゼロまで沈んだ(純利益34.7億円は投資有価証券の売却益57.8億円による)
  • 2026年3月期に入っても株価は重く、2026/2/2に安値3,330円。この時点の市場の目線は「サイクルの谷がいつ明けるか」だった
  • 中国セグメントは当期も売上▼28%と回復が遅れ、欧州は買収したハーモニック・ドライブ・エスイーの無形資産償却10.1億円が利益の重しとして残る——海外の足取りは一様ではない
きっかけ受注の回復+AIロボットの一行

受注616億円(+16.2%)と、短信に載った「量産移行」 5/13のFY決算

  • 5/13(引け後)のFY決算で、通期受注616億円(+16.2%)を開示。会社が挙げた回復の中身は①産業用ロボット向け=自動化投資と電子部品・半導体関連の増強投資 ②半導体製造装置向け=生成AI関連の先端半導体投資が年明け以降拡大「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注を獲得」——の3本柱
  • 2027年3月期計画は売上680億円(+14.2%)・営業62億円(+141.5%)・純利45億円。営業利益率を4.3%→9.1%へ戻す V 字計画で、配当は年20円(連結配当性向35%目処)
  • 株価は5月から7月にかけて上値を追い、7/6に8,890円。2020年12月の高値9,380円(データベースで確認できる範囲の最高値)に▼5%まで迫った。この間、ロボット・FA関連は「ヒューマノイド(人型ロボット)」というテーマの温度が世界的に上がった時期と重なる
たしかめ固有か、地合いか

上げも下げも、開示のない日に大きく動いた 日付の対応で確認

  • 5/13のFY決算翌営業日の反応は限定的で、その後の大きな上げは開示のない日に積み上がった。7月の高値8,890円→7/31の6,140円(▼31%)も、この間に会社の適時開示はない
  • 7/28は市場全体の急落(TOPIX▼2.5%)の日で、この銘柄も市場の波と同じ方向に大きく動いた。固有の数字より、テーマと地合いの温度で動く局面が続いていると読める(ほかの要因の可能性は残る)
  • つまりいまの値段は「受注回復という固有の事実」の上に「AIロボットというテーマの期待」が乗った二階建て。まもなくの1Q決算は、一階部分(受注)の答え合わせになる
いまの位置
2/2の安値3,330円からの+115%(7月高値8,890円からは▼19%。いずれも8/7終値7,160円で計算)のうち、数字で裏付けが取れている範囲は8/7の1Qで一段広がりました。四半期の受注は241億28百万円(前年同期比+55.7%)、四半期の営業利益率は11.0%で、会社は通期の営業利益計画を62億円→85億円(利益率11.4%)へ引き上げています。「V字が計画倒れになる」という側の懸念は、少なくとも1四半期分は後退しました。

一方で、まだ数字になっていないものは残っています。①この受注水準が続くか——241億円のうち34億円分は北米の手術支援ロボット向け「まとまった受注」の増加で、この1行だけで受注増加額の4割を占めます(それを除いても受注は+36.0%で、伸び自体は広い範囲で起きています)。②下期の採算——計画を逆算すると下期は営業利益率12.4%が要る計算で、1Qの11.0%からもう一段の改善が前提です。③「AIロボット量産の実需化」——今回の短信本文にこの語は現れず、受注増の説明は産業用ロボット向け・半導体製造装置向け・手術支援ロボット向けの3つでした。

つまりこの四半期に起きたのは、一階(数字)が高くなった一方で、二階(テーマ)の言葉の裏づけはむしろ薄くなった、という非対称な変化です。部品メーカーの宿命として、顧客(ロボットメーカー)の量産判断が先、当社の数字は後——期待が数字に変わるまでのタイムラグが、いまの株価の賭けの中身であることは変わりません。
順番に注意 — この銘柄は「数字」と「記述」の両方を読む

売上600億円の会社に約6,000億円の値段がつくとき、決算の数字だけでは動きを説明できません。この銘柄では短信の定性記述(「AIロボット向け量産移行の受注」のような一行)がテーマの燃料になり、数字より先に株価を動かすことがあります。決算のたびに受注の数字→定性記述の変化→利益率の順で見るのが、この銘柄の型です。

2

会社は大丈夫なのか(決算と、その土台)

短期の値動きから離れて、会社そのものを見ます。ハーモニック・ドライブ・システムズは波動歯車減速機の専業でニッチ世界首位。「ハーモニックドライブ」は同社の登録商標で、この方式の減速機そのものの代名詞になっています。東証プライム上場・3月期決算・日本基準。数字の出どころは決算短信・適時開示の実数です。

売上高
595億
2026年3月期実績(+7.0%) → 2027年3月期計画745億円(+25.1%・8/7に上方修正)
営業利益
25.7億→85億
利益率4.3%→11.4%へ戻す計画(8/7に上方修正・1Q実績は11.0%。2025年3月期はほぼゼロだった)
連結受注高
241億
2027年3月期1Q・前年同期比+55.7%・売上(167億)の1.45倍(前期通期は616億・+16.2%)
配当
年20円
2027年3月期も20円予想(修正後の予想EPS 63.38円に対し32%)。8/7の修正でも配当予想は据え置き。会社方針は配当性向35%目処+業績変動時は安定配当に配慮

利益率の振れ幅——ゼロと9%を行き来する損益構造 (8/3執筆)

売上の振れ(556→595→計画680億円)に対して利益の振れがけた違いに大きい——固定費の重い部品工場の宿命で、稼働率の振れが利益率を大きく揺らします(実績:0.01%→4.3%)。逆に言えば、受注→稼働率→利益率の順で数字が波及する構造なので、いちばん早い先行指標は受注です。

知っておきたい3つのこと (8/3執筆)

この計画を1本の鎖にすると(成立を確認する順番) (8/3執筆)

受注の持続(四半期241億円ペース/うち北米の一過性の可能性が残る分34億円)工場稼働率の上昇原価率の改善営業85億円(利益率11.4%・下期は12.4%が必要)——ここまでが今期計画の鎖。その先に「AIロボット量産→受注の桁が変わる」という期待の鎖が接続されています。前者は四半期ごとの決算で確認できますが、後者は顧客の量産判断次第で、当社の開示だけでは検証しきれない——ここが、この銘柄の分析の限界であり、値動きが荒くなる理由でもあります。

3

いまの株価は割高か、割安か(PERの物差し選び)

PER=株価が「1年分の利益」の何倍まで買われているか。数字が小さいほど割安に見えます——が、この銘柄のPERはどの利益で割っても日本株全体でよく目安にされる水準(十数倍)から大きく離れます。その「離れ方」自体が情報です。

PERの推移(会社予想EPSベース・日次) 2026-02 → 2026-08-14

計算:その日の終値 ÷ その時点で公表済みの会社予想EPS。予想EPSは13.73円(3Q時点の当期予想)→16.69円(4/24修正)→47.54円(5/13の来期予想)。いずれも引け後開示のため翌営業日から分母に反映。

会社予想PER
113倍
2026-08-07終値7,160円 ÷ 修正後の予想EPS 63.38円
実績PER(参考)
421倍
実績EPS 16.99円ベース——利益の谷の数字で割った参考値
分母(予想EPS)の変遷
16.69→47.54→63.38円
5/13の来期予想への切り替えで2.8倍、8/7の上方修正で3段目(+33%)。PERの見かけはその分だけ下がった

読み方 ── サイクルの株には教科書的な逆説があります——利益が谷にいるときほどPERは高く見える。実績421倍はその典型です。8/7の上方修正は、分母を47.54円→63.38円へ+33%押し上げました。同じ7,160円でも、修正前の分母なら151倍、修正後の分母なら113倍——上方修正はPERの見かけを4分の1ほど削りました。それでも113倍です。会社が引き上げたばかりの計画を丸ごと達成しても、なおこの倍率が残る——ここが、この銘柄のPERを「サイクルの逆説」だけでは説明しきれない理由です。残りの部分は、今期計画のさらに先——ニッチ独占が続くこと、AIロボットの量産が受注の桁を変えること——への期待と読むのが自然です。ただし今回の短信本文に「AIロボット」の語は現れませんでした。二階部分の言葉の裏づけが薄いまま倍率だけが残っている、というのがいまの姿です。この期待は決算数字で直接は検証できないぶん、テーマの温度で値段が大きく揺れます——7月の▼31%は、その揺れの実例です。
※この7,160円は8/7 16:00の開示より前についた値段で、113倍は「開示前の株価÷開示後の分母」の混成値です(開示後の最初の値付けは8/10)。

いまの株価に織り込まれている前提

8/7終値の7,160円が成立するために必要な前提は、「四半期の受注が241億円の近辺に残る(北米のまとまった受注が一過性で終わらない)」「下期の営業利益率が12.4%まで上がる」「AIロボット向け量産が受注の桁を変える話として生き続ける」——このどれもが崩れていないこと、と整理できます(株価から前提を一意に逆算できるわけではありません)。

崩れる合図──2Q(7〜9月)の受注が前期の帯(140〜176億円)に戻る2Q単独の営業利益が18億60百万円(中間計画37億円−1Q実績18億40百万円)を下回る/「AIロボット向け」の記述が次の短信でも現れない状態が続く/テーマ全体(ロボット・FA関連)の急速な温度低下。どれかが出たら、このページの見立ては見直しです。

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価格の地図——過去1年、どの値段で折り返してきたか

売買の指示はしません。過去1年の値動きが「どの価格帯で折り返してきたか」を、機械的なルールで塗った地図です。決めるのは、この地図を見たあなたです。

価格の地図(直近1年・調整後終値) 2025-07-29 → 2026-08-10

この地図には2種類の帯があります。面の帯(塗り)=10日以上離れて3回以上、値動きが折り返した価格帯。青の斜線=下げ止まりの記録がある支持帯、橙の点=上値を抑えられた記録がある抵抗帯枠の帯(囲み)=大きな値動きが始まった起点の値幅(青枠=上向き、橙枠=下向きの起点)。帯の位置は機械的なルールで引き、名前(支持帯・抵抗帯・上場来高値の帯など)は分かりやすさのための呼び名です——手で選んでいません。チャート上の①〜⑥は、下の説明と対応しています。各帯のPERは会社予想EPS 63.38円(2027年3月期・2026-08-07開示)で換算した参考値で、予想EPSが変わればPERの位置も動きます。

① 支持帯 5,120〜5,940円(5月〜7月に3回下げ止まり・PER80.8〜93.7倍)

接触3回:下げ止まり3・割れ0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=05/20、06/11、07/29

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

② 26年4月の大きな上げの起点の帯 4,190〜4,330円(PER66.1〜68.3倍)

2026-04-24から5営業日で+36.1%の上げが始まった日の値幅(6.4ATR)|形成後、価格はまだ一度もこの帯に戻っていません(再訪なし)

③ 抵抗帯 3,874〜4,171円(25年12月〜26年2月に3回反落・PER61.1〜65.8倍)

接触3回:反落3・上抜け0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=12/12、01/06、02/12

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

④ 支持帯 3,190〜3,625円(25年12月〜26年3月に4回下げ止まり・PER50.3〜57.2倍)

接触4回:下げ止まり4・割れ0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=12/19、01/13、02/02、03/31

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

⑤ 25年9月の大きな下げの起点の帯(上抜け済み) 2,728〜3,225円(PER43.0〜50.9倍)

2025-09-18から5営業日で-15.0%の下げが始まった日の値幅(3.5ATR)|その後の再訪1回:反落0・上抜け1・未決着0|④の帯と一部交差

⑥ 支持帯 2,255〜2,586円(8月〜11月に4回下げ止まり・PER35.6〜40.8倍)

接触4回:下げ止まり4・割れ0・未決着0|判定期間:直近1年(2025-07-29〜2026-08-10)|接触日=08/08、09/04、10/01、11/19

この帯に近づいたら確認する3点——①次の決算・KPIの進捗 ②信用残の変化 ③市場全体の地合い

(①に重なる枠帯)26年5月の大きな上げの起点 5,800〜6,050円

2026-05-20から5営業日で+35.1%の上げが始まった日の値幅|その後の再訪2回:下げ止まり1・割れ1・未決着0|①の帯と大きく重なる(狭い方の帯幅の56%)=2つの別ルールが近い場所を指した帯

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 3,835〜3,965円(23年9月の大きな下げの起点・現換算PER60.5〜62.6倍)

5営業日で-10.0%の下げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 3,805〜4,145円(23年8月の大きな下げの起点・現換算PER60.0〜65.4倍)

5営業日で-14.1%の下げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

◽ 参考(直近3年・直近1年より前): 3,155〜3,265円(23年10月の大きな上げの起点・現換算PER49.8〜51.5倍)

5営業日で+14.3%の上げの起点。直近1年より前のため参考表示(チャートには塗っていません)。相場環境が今と異なる時期の記録です。

参考:PERの物差し(会社予想EPS 63.38円=2027年3月期予想・2026-08-07開示)

36倍=2,282円/37倍=2,345円/68倍=4,310円/94倍=5,958円/100倍=6,338円/101倍=6,401円。現値6,380円≒PER100.7倍。

※PERは会社予想が変わればラインごと動きます。帯とPER水準が重なるのは結果であって、どちらかが根拠というわけではありません。

⚠ 過去に折り返した帯・値動きの起点の帯は約束ではありません。支持帯を終値で2日連続下回った場合は、その帯の下げ止まり記録が崩れたものとして、次の開示と市場全体の地合いを確認します。帯のルール=面の帯:10日以上離れた接触3回以上・幅は接触価格±0.25ATR/枠の帯:直前5日の終値最安(最高)の日から5営業日以内に3.0ATR以上動いた日の値幅(値動きの大きい順に各方向3本まで・今回ほかに9本の起点を省略)。この帯は毎週、同じルールで機械的に引き直します。

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テクニカルと需給の現在地

売買の指示ではありません。よく見られる目安と、いまの位置の記述です。

25日移動平均線
7,130円
現値6,330円はその▼11%下(2026-08-03時点)
7月の高値
8,890円
7/6。現値6,330円はそこから▼29%
2月の安値
3,330円
2/2。現値はそこから+90%の中腹
信用需給
2.2倍
7/24公表の信用倍率。買い残82.5万株=1日平均出来高(7月・約192万株)の半分以下

位置の整理 ── 2月からの上げ幅(+167%)の約4割を返した位置にいます。急騰・急落とも出来高を伴っており、短期の資金の出入りが激しい銘柄です。確認点は①7月からの調整で安値を切り上げられるか ②戻す場合、8,890円と2020年高値9,380円の間の壁 ③まもなくの1Q決算への反応——の3点。売り残37.3万株は買い残の半分近くあり、売り方・買い方の両方が積み上がった状態で決算を迎えます。

下値の目安とサイン(日足75本) 〜2026-08-14

↓印=窓開け(前日から飛んで下げた日)。縦軸=株価(円)・横軸=日付。線の意味は凡例のとおり。毎日夜に自動更新。

信用残(週次)と売買代金 2025-07 → 2026-08-14

左目盛:万株(線)。下の棒:1日の売買代金(億円)。信用残は週1回の公表。

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総合判断と、今後の注目点

結論を先に——いまの6,140円は「受注の回復」を織り込み終え、「V字計画の達成」と「AIロボット量産」を先取りしている値段です。前者は5/13に数字で確認済み、後者二つはまだ計画と期待の中にある。その答え合わせの第1回がまもなく発表される1Q決算(例年8月上旬・前年は8/6)です。読み方の条件は「今週なにが変わったか」欄に発表前に固定して置いてあります。

✅ 計画が進んでいるサイン(上向き)

⚠ 前提が崩れるサイン(下向き)

📅 次に見るカレンダー

🧾 ニュースの見立てと答え合わせ — ハーモニック(6324)

読み込み中…
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出典・参考資料

このページの「なぜ」は、以下の適時開示と市場データをもとに、アルミナが整理・解釈したものです。

出典をすべて見る(タップで開く)

ハーモニック・ドライブ・システムズの適時開示(一次情報)

  • 2026/5/13 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕——売上595億・営業25.7億・受注616億円(+16.2%)・「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注を獲得」の記述・セグメント別業績・2027年3月期計画(売上680億・営業62億・EPS 47.54円)・配当方針(連結配当性向35%目処)の出典
  • 2026/4/24 業績予想の修正に関するお知らせ——2026年3月期予想の修正(EPS 16.69円)の出典
  • 2026/2/10 2026年3月期 第3四半期決算短信——期中の当期予想(EPS 13.73円)の出典
  • ハーモニック・ドライブ・システムズ 公式サイト(決算短信・説明資料の原本は公式サイトIRページから)

データの出典

  • 株価・出来高・信用残・TOPIX:証券取引所が公表する市場データ・各社の決算資料をもとにアルミナが整備したデータベース
  • PER・移動平均等の指標:上記データからアルミナが算出(計算方法は各章に記載)
  • 2020年12月の高値9,380円:アルミナのデータベースで確認できる範囲(2013年〜)の株式分割調整後終値
  • 決算発表の時期(例年8月上旬):同社の過去の発表実績から(正式な日付は会社の発表で確定)

決算数値は適時開示の実数(日本基準)。アルミナの解釈・整理は会社開示と区別しています。

このページの約束:①嘘を書かない ②煽らない ③外れる条件(見直しのサイン)を必ず書く ④どこにも誘導しない。「上がる/下がる」は言い切らず、しくみ・事実・見直しの条件・見ておく場所だけをお伝えします。